11.遠くに連れていって?
「遠くに連れていって?」
「遠く……ねえ」
すでにここは大陸から離れた辺境の地にいるのだが。
そのさらに遠くとは、彼女の中ではどこを思い描いているのだろう。
だからといってどこへ行きたいなどと訊くのは愚問だ。
クリーオウが遠くと言ったら遠くなのだから。
大好きな彼女の顔を見て、オーフェンはぼんやり考える。
その幸せそうな笑顔のためなら、何だって叶えてみせよう。
「今からか?それとも今度の休みを使って行くか?」
明日はまた仕事で、しかも今日は暮れてしまっているので、さほど遠くへは行けない。
それでも彼女が行きたいのであれば、オーフェンは喜んで付き合うつもりだった。
「どっちでもいいの」
「そっか」
要は甘えたかったのだろう。
もしくはオーフェンとくだらない話のやり取りがしたかったか。
彼はふと窓越しに空を見上げる。
確か満月からだいぶ経ち、月も細くなっている時期のはずだ。
家から十五分も歩けば、人口の灯りはなくなるだろう。
遠くではなくても、いつもとはきっと違う気分になれる。
「今から星でも見に行くか?」