9.いなくなったりしないで?
「いなくなったりしないで?」
何気ない、甘えたような願いでも、時にはオーフェンの胸をえぐることがある。
クリーオウの今の一言はまさにそれで、彼は言葉を詰まらせた。
いたたまれなくなって、オーフェンは彼女を抱き寄せる。
何が悪いわけでもないけれど、心の底から謝りたい気分だった。
「どこにもいかないし、行きたくもない」
「……うん」
「けど、お前がいれば俺はどこへ行ったっていい」
「……うん」
クリーオウはうなずいて、ぎゅっと彼にしがみつく。
彼女がそうしてくれたことで、オーフェンもようやく安心することができた。
こんなにも愛しい存在を、自分が手放せるはずもない。
万が一彼女が攫われてしまっても、オーフェンはどんな手段を使ってでも取り戻すだろう。
絶対に離れないと、命をかけて誓える。
そう思うと、無性に切なくなる。
涙が出そうなほど、クリーオウが恋しくなる。
腕の中に彼女がいるのに、とても心細い。
オーフェンはクリーオウを強く抱きしめたまま、唇を耳元に寄せた。
「ずっとお前のそばにいる」