7.2人きり。会議室での会話ゼロ。 


あとは新大陸に着くのを待つのみとはいえ、定期的に会議は開かれることになっていた。
あいつへの対応についてはもちろんだが、他にも船の調子、人の調子、食料、物資の確認など内容は様々である。
自分が出席したところで有益なことは何もないだろうと思うが、欠席するわけにもいかない。
オーフェンは開始時刻のかなり前から、ひとりでぼうっと会議室の席についていた。
昨夜はよく眠れず、体も意識もすっきりしない。
しかしいつまでもベッドにいようという気も起きず、こうして早朝からここへ来ていた。
もうそろそろ、時間に律儀な誰かが来てもいい頃合いである。
と――
軽いノックの音がして、真新しい木製でできた会議室の扉が開く。
それに緊張する間もなく、会議のメンバーであるクリーオウが姿を見せた。
上座に――いつのまにかそれが定位置になってしまった――いるオーフェンと、必然的に目が合う。
「あ……」
オーフェンが思わず腰を浮かせて、意味のない声を発した。
が、とっさのことで後が続かない。
それは彼女も同じだったらしく、苦い表情で固まった。
ドアノブに手をかけたままちらちらと視線を動かし、やがてあきらめたように部屋に入ってくる。
引き返そうにも、理由がなかったのだろう。
無言のままオーフェンとは目を合わせず、クリーオウは彼と少し離れた、右斜め前の席についた。
オーフェンも、何と言っていいのか分からず、座り直す。
「…………」
沈黙が痛い。
昨日けんか別れしたきりだったため、余計につらいのかもしれない。
ちらりと彼女を見やるが、クリーオウもまたばつが悪そうに持ってきたノートをにらんでいた。
「…………」
声を出そうと口を開くが、肝心の言葉が出ない。
仕方なくオーフェンは、開いた口を再び閉じた。
(怒ってないって言ってやった方がいいか?)
実際自分は少しも怒ってはいない。
どちらかというと困惑していた。
知らずに傷つけたなら謝りたいと思うし、至らないことがあるならいくらでも改善するだろう。
けれどクリーオウが何も言ってくれないので、彼はどうすることもできなかった。
もしかするとオーフェンが気づけないことに、彼女は苛立っているのかもしれない。
二人きり。
会議室での会話ゼロ。
あまりにも気まずくて、誰でもいいので早く来てくれないかとさえ考えてしまう。
けれどそれでは何の解決にもならないのだ。
視線を少し上げて、もう一度クリーオウを見る。
彼女は変わらない姿勢で、ノートをにらみつけいた。
どことなく悲しそうに見えるのは、錯覚だろうか。
おそらくそうではない。
いつもストレートに表情が出る娘なので、彼女は今悲しい思いをしているのだろう。
それを聞いてやりたい。
できれば慰めてやりたい。
オーフェンは無言のまま、彼女を悲しませる原因を探った。
2009.1.27
もう一月終わり!?
無言のままでもここまで書けたのですごいなと思いました。
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