3.覗き込んだら、怒り出してしまいそう。 


オーフェン自身、どことなく浮かれていた感はあったのだが、ようやく気づいたことがあった。
クリーオウの機嫌が、あまり思わしくない。
目を合わせてくれないのもそうだが、話をしても笑ってくれない。
彼女は寝不足だからと言っていたが、それだけではないように感じた。
「クリーオウ、本当に大丈夫か?」
狭い船の廊下を歩きながら、彼女に尋ねる。
「平気。お手伝いくらいならできるわ」
笑みの形を作って、クリーオウはうなずく。
オーフェンは会議くらいしかすることがないのだが、クリーオウは違うようだった。
もともと家事が万能な娘なので、仕事くらいいくらでも見つけられるのだろう。
「けど……」
やはりつらそうに見える。
そう言いたかったが、オーフェンは口をつぐんだ。
朝食を食べる前も同じ質問をして、クリーオウは大丈夫だと答えた。
あまりしつこく言っても、彼女はうるさいと思うだろう。
結局、オーフェンは彼女を心配することしかできなかった。
それに、覗き込んだら怒り出してしまいそうで。
「つらくなったらすぐに言えよ」
それにはクリーオウは素直にうなずいた。
気を良くして、オーフェンが続ける。
「やっぱり俺も一緒に行こうか。ちゃんと見てないと心配だし」
「……え?」
「だってこうして歩いててもふらついてるぞ。いつ倒れるかわかったもんじゃない」
「いいわよ、オーフェンも忙しいでしょうし」
クリーオウは首を振って拒否を示す。
遠慮というよりは、ただ彼女は意地を張っているだけのように見えた。
それがなぜだかは分らないが。
オーフェンは嘆息して、眉間にしわを寄せた。
「来てほしくないってんなら、部屋で休め。俺が近くにいるか部屋で休むかどっちかでないと、認めないぞ」
「…………部屋で休んでる」
こちらに引く気がないと分かったのか、やがて根負けしたようにクリーオウが呟く。
オーフェンはそれに満足してうなずいた。
「それがいいと思う。別に俺はお前をいじめたくてこう言ってるわけじゃないからな」
「……うん」
「部屋まで送るよ」
「いい。ちゃんと休むから、ついてこないで」
「……分かった」
ここでオーフェンが付き添いたいと申し出ても、彼女は絶対に譲らないだろう。
怒り出して無茶をされるよりは、今のうちに引き下がった方が良い。
オーフェンはいつのまにか元気を失った彼女の小さな背中を、じっと見守った。
2009.1.29
これは別の場所に書いてたので、お題コンプした後に半分だけ書きました。
そうするともう。すごいですよ。
クリーオウがよろめいたり、オーフェンが抱き上げたりと、いろいろ。
オーフェンの心配ぶりがすごかったです。
心配で心配でたまらない感じ。
次の話とつじつまが合わなくなるので、軽めにしましたけど。
大好きなんだね。
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