2.見ていても目さえ合わせてくれない。  


誰が提案したのかは知らないが、朝食はバイキング形式だった。
各自が自分の好きな料理――種類は少ないが――を好きなだけ取り、好きな場所で食べる。
オーフェンはクリーオウと同じ料理を取り、彼女の正面の席に座った。
彼女は体調管理に気を付けているのか、選んだ食べ物は野菜が多くバランスが良い。
自分では適当にしか食べないので、クリーオウに合わせれば健康になれそうな気がした。
「昨夜はどうして眠れなかったんだ?部屋が気に入らなかったのか?」
プチトマトをフォークで突き刺しながら、オーフェンが問いかける。
オーフェンの友人ということで、彼女に割り当てられたのは関係者専用の警備が厳重なホテルだった。
スイートではないにしろ、広めの部屋を使ってもらっている。
清掃も入っているし、居心地は悪くないと思うのだが。
クリーオウもまた食事に視線をやりながら、答えてくる。
「お部屋は素敵よ。ただ考え事してたら、眠れなくて」
「そうか」
無事にアーバンラマに着いたが、問題が全て解決したわけではない。
家族のことや体のことなど、心配することはいくらでもあるだろう。
オーフェンは追求せず、うなずくだけにした。
「そうだ。何か足りないものとかないか?必要なのがあったら言えよ」
話題を変えようと、明るい顔を作る。
言うと、クリーオウもにこりと微笑んだ。
視線も上げるが、なぜか目は合わなかった。
「ここの人たちみんなすごく気を遣ってくれってて不自由なことはないわ。ありがとね」
「ふーん。ま、出てきたらいつでも言ってくれ」
うなずきながらオーフェンは、身近な人間の顔を思い浮かべる。
他のメンバーも、クリーオウのことを気にかけてくれているらしい。
結束している集団へ突然入ってきた――しかも特別扱い――彼女に周囲は冷たいかもしれないと心配したのだが、それを聞いて安心した。
ほっと息を吐いて、食事を続ける。
続けながらも、オーフェンはずっとクリーオウを見ていた。
料理はどれも簡単なものだったが、彼女は感慨深そうに食べている。
旅の最中は味よりも体力維持を優先させた酷い携帯食だったというから、こんな料理でも嬉しいのだろう。
そうまでしてオーフェンに会おうとしてくれたと思うと、泣きそうになる。
「……うまいか?」
それをごまかすためではなかったが、オーフェンは聞いてみた。
クリーオウはふとフォークを止め、数秒後にこくりとうなずく。
「……うん」
それが何よりである。
オーフェンもうなずき返し、やはりクリーオウをじっと見つめていた。
しかしきっと気づいているはずなのに、見ていても目さえ合わせてくれない。
視線が合いそうになると、彼女はあわてたように違う方を向く。
だが、クリーオウがそばにいるので、彼はそれだけで満足だった。
2009.1.19
途中から4日!?ってなったので慌てました(苦笑)。
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