どんな仕草も可愛すぎ
彼の愛する彼女は、基本的に何をしていてもかわいかった。育ちがいいせいか、どの動作を見てもどことなく品がある。
意識してやってのけるというよりは、身についているようだった。
ともかく、見ていて気持ちがいい。
それは別にしても、クリーオウのことはずっとながめていても飽きることがなかった。
そんなことを考えながら、家に入る。
「!」
軽く散歩に行っていたのだが、ソファの上で眠っている彼女を見つけて、オーフェンは息を呑んだ。
「……!」
あまりのかわいさに、体が震える。
クリーオウはソファの上で横向きになって、すやすや寝息を立てていた。
まるで警戒心のない顔で、幸せそうに。
オーフェンはだらしなく表情を緩め、ソファの隣にかがみこんだ。
かわいいなと思いながら、そっと彼女の金髪に触れる。
「こんなところで寝てたら風邪ひくぞ?」
自分は本当に起す気があるのか疑問に思いつつ、彼はささやいた。
「…………」
反応があったような気もする。
けれどクリーオウが目を覚ます気配はなかった。
代わりに、彼女の顔の近くで眠っていたレキが緑色の瞳を開ける。
きょとんとした双眸でこちらを見上げてきたので、オーフェンはぽんと頭に手を乗せた。
この小動物とセットで、オーフェンは物語の中にでも入り込んだような気になってしまう。
それは冗談だとしても、思わず幸せな溜息がこぼれた。
「レキ、クリーオウをベッドに運ぶからお前は……」
こちらの言いたいことをすぐに読み取ったのか、レキはぴょんと彼の肩によじ登る。
それを見やってから、オーフェンは彼女を起さないようにそっと抱き上げた。
が、やはり抱き上げておいて眠ったままというのは無理があるのだろう。
意味のない小さな声を出して、クリーオウがぼんやりと目を開けた。
ささやきかけようかどうしようかと迷いながら、結局クリーオウを見つめるだけにする。
すると彼女は、眠気に勝つことができなかったのか、こちらに微笑むこともせず再び目を閉じた。
(かわいい……)
彼のされるがままになって、自然と受け止めてくれる彼女が愛しい。
喜びに打ち震えながら運んでくると、クリーオウはオーフェンの胸に頬をすり寄せてきた。
「……!」
彼女は寝心地を整えているだけなのだろうが、そんな仕草がかわいい。
(かわいすぎる)
例えようもなく幸せで、オーフェンはほんの少し彼女を抱く力を強くした。
そうしているうちに、寝室に着いてしまう。
名残惜しく思いながら、彼はそっとクリーオウをベッドに下ろした。
肩の上に乗っていたレキも、ぴょんとベッドに飛び降りる。
毛布をかけてやりながら、オーフェンは彼女の寝顔を間近で見つめた。
クリーオウは相変わらず気持ち良さそうに眠っている。
ただ眠っているだけなのだが、とても温かい気持ちになれた。
彼女の小さな右手をそっと握る。
触れていることが嬉しくて、オーフェンはいつまでもクリーオウのそばを離れなかった。
2009.3.13
オチがない話なんですけど。
私って、ただ幸せ〜って思うだけの話を書くことが多いような気がします。