限界寸前に達したストレス

忙しい時期というのは、きっと誰にでもあるものだ。
時間が自分の思い通りにならない時が。
彼女との時間よりも大切なことはないはずなのに、どうしてなのか後回しになってしまう。
ゆっくりと話すどころか、キスも唇をかすめる程度にしかできなかった。
寂しいものの、あまり寂しさを思い出す余裕がないのでそれもまた困る。
けれどクリーオウのことを想うと不憫でならなかった。
きっと一人でいじけているのだろう。
時計を見る。
いつもなら仕事が終わる時刻なのだが、やらなければならないことをあげていくと、とても終われそうになかった。
忙しすぎて、逆に笑えてくる。
一息入れた方がいいのかもしれないと、オーフェンは嘆息して外へ出た。
と――
「クリーオウ」
彼を迎えに来たのか、こちらの姿を見つけた彼女がぱっと表情を明るくする。
嬉しそうにぱたぱたと駆けてきた。
オーフェンの手に触れて、笑顔を見せる。
「今日はもうおしまい?」
期待のこもった眼差しで問われて、彼は顔を歪めた。
うなずいてやりたいが、そうもいかない。
「まだまだ帰れそうにない」
苦い味をかみしめながら、そう答える。
言った瞬間、クリーオウは泣きそうになりがらわめいた。
「もう帰るの!」
「んなこと言ったって、お前……」
普段なら素直に聞き分けてくれるのだが、どうやらストレスが限界寸前にまで達しているらしい。
対応を誤れば、本当に泣き出してしまうだろう。
「だって最近オーフェンとちっとも話せてないんだもの。帰ってきてもすぐ寝ちゃうし……!」
こちらをにらみつけて文句を言ってくるが、見るみるうちに青い瞳に涙がたまっていった。
すぐにあふれてこぼれてしまったので、オーフェンはおろおろとクリーオウを抱き寄せる。
彼女はこちらにしがみついて、わんわん泣いた。
小さな背中を撫でてやりながら、オーフェンは持っている仕事を思い浮かべた。
やるべきことは山ほどあるが、それらは全て今日中にやらなければいけないものだろうか。
後日にまわせるものだったり、無駄なことまで背負ってはいないだろうか。
落ち着いて考えてみると、すぐに処理が必要なことはほとんどなかった。
何でもかんでも自分でやらなければと、気負いすぎていたのかもしれない。
「クリーオウ」
オーフェンは彼女の名前を呼んで、顔をこちらに向けさせた。
金髪の頭を優しく撫でて、笑ってみせる。
「あと三十分だけ待ってられるか?そしたら今日は一緒に帰ろう。で、家でゆっくりしゃべろうか」
たまには早く帰って、リラックスするのもいいだろう。
煮詰まったままだと視界も狭く、効率も悪い。
深呼吸してまわりを見るのも大切だということに、改めて気づいた。
「……うん」
涙をためたまま、クリーオウが笑う。
そういえば、彼女のこんな笑顔も久しぶりだった。






2009.3.9
ここまで仕事話にするつもりはなかったんですけど(苦笑)
体験談がありありと表れてますね……
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