バレバレの聞き耳

久しく忘れていたのだが、クリーオウはやきもちやきな面がある。
普段は隠れていて出てこないが、彼女はたまにそれを見せてくれることがあった。
時にはめんどうなことにもなるが、男冥利に尽きるので、オーフェンとしても嬉しい。
何よりも、やきもちが生まれるという彼女の心の余裕が見て取れた。
それどころではない時もあったので、なおさらそう思うのかもしれない。
ともかく、オーフェンが友人と二人で立ち話をしている際、それが起きた。
いつもならオーフェンが知らない人間といようとさっさと近寄ってくるクリーオウなのだが、今日はめずらしくそうしない。
建物の陰に隠れるようにして、こちらの様子をうかがっているようだった。
「なんか、変な子がいるんだけど……」
話し相手もクリーオウの存在に気づいたのか、声の調子を変えずに警告してくる。
オーフェンはそれに小さく噴き出してうなずいた。
「ああ、知ってるよ」
「?あなたからは見えないわよね?後ろにいるんだし」
「いやまぁ、気配でな」
愛しい妻の気配である。
それがオーフェンに分からないはずがない。
彼女自身、一所懸命気配を消しているようだが、妙なオーラが出ているせいか今日はきっぱりと下手だった。
現に、目の前の女性にも早速バレている。
「って、ごめんなさい。よくよく見るとあれってあなたの奥さんだったっけ」
「あ、見ないでやってくれるか?本人はうまいことやってるつもりらしいから」
気まり悪げに言って視線をクリーオウに向けようとしたところを、オーフェンが先に制してやめさせる。
すると相手はこちらの考えていることを察したのか、くすっと笑った。
「悪い人ね。嫉妬させて喜んでるなんて」
「かわいいだろ」
得意になって、クリーオウのことをつい自慢する。
すると彼女は、おかしそうに爆笑した。
「ホント、かわいいわぁ。ほら、心配になったのか少し近づいたわよ?」
「あそこからじゃ話し声までは聞こえないからな」
「あんまりいじめちゃかわいそうよ。だからわたし、もう行くわね?」
くすくすと笑って、手をあげる。
オーフェンがうなずくと、彼女は満足そうにうなずいて行ってしまった。
それを見送ってから、さて、と気を取り直す。
「そこにいるのは分かってんぞ。出て来いよ」
クリーオウには背を向けたまま、声だけを届かせる。
すると彼女は声にならない悲鳴を上げて、観念したのか建物から出てきた。
オーフェンは振り返って、彼女がこちらに来るのを待つ。
「近くを通りかかったから」
「隠れてたのか?」
「……聞いてないわよ」
「聞こえなかったんだろ」
クリーオウの言い訳を、彼は容赦なく指摘した。
恥入ったのか、彼女はしゅんとうなだれる。
その姿がまた何とも言えず愛らしい。
ここが公衆の面前でなければ今すぐかわいがってやるのに、とオーフェンはやや残念に思った。






2009.3.7
きゃわいい……v
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