□ おかえり □



なんとなく寂しくなって。



なんとなくクリーオウに会いたくなって。



その『なんとなく』が強くなって。



トトカンタのよく歩きなれた道を歩いていた。



ふと、顔を上げてみると。



20メートル先に、クリーオウがいた。



鼻歌でも歌うように、のんびりと歩いている。



歩みを止めてクリーオウを見ていると、彼女がこちらに気付いた。



彼女はきょとん、と立ち止まって、それからととと。と近寄ってきた。



「おかえり」



道のど真ん中だというのに、そんなことを言う。



彼は少し戸惑った。



ここは家ではないのに。



おかえり?



でも、彼は言った。



「ただいま」



住む場所なんてどこでもいい。



彼女こそが、彼の家。







ただいま。










(2004.2.7)
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