ロッテ・・・生きてるってことでお願いします(じゃあパラレルに持ってけよ)。
それいけ!ダメダメオーフェン vol.7
こんにちは、ロッテーシャです。
先日、久しぶりにエドが顔を見せにきました。
そして「俺はキリランシェロがわからなくなった。だが奴の言いつけを守らなくてはどうなるかわかったものではない」とだけ言うと、彼はまたどこかへ行ってしまいました。
そんな自分勝手な男に腹が立ったものだから気分転換にクリーオウに会いに行ったのですが・・・。
「このあたりでいいのよね?」
ロッテーシャは手に持った手紙の住所を見ながら独りごちた。
先日、クリーオウがよこした手紙には『ロッテ元気?わたしは元気です。今わたしはオーフェンと2人でトトカンタで暮らしています。また遊びに来てね』とあった。
最近はこれといってすることもなかったし、先日のエドの相談にも乗ってもらおうと、クリーオウたちの新居に厄介になることにした。
彼女の家にオーフェンがいることが気になったが、まあ気にすることもないだろう。
邪魔なようなら自分が出て行けば良いのだし。
ロッテーシャは手紙に書かれた住所と街並みを何度も見比べながら歩いていた。
トトカンタは広く、地理的にも未知の場所なので目的地を探すのにも苦労する。
と、視界の隅の方に
花を一輪手にした男
が映った。
(恋人へのプレゼントかしら。仲が良くってうらやましいわ)
小さく嘆息する。
エドが自分のために花束を買ってきてくれるということはとても想像できない。
愛想のかけらもない男なのだ。
その点は、オーフェンもエドと同様に思えた。
自分もクリーオウも、もっと優しい男に出会えたなら良かったのに、と不毛なことを考える。
どんなに後悔したところで、やり直しがきかないのは当然なのだ。
とりあえず、花を買うのはどんな男だろうという好奇心からロッテーシャはちらりとその人物を見やる。
「―――っ!」
相手の顔を見た瞬間、ロッテーシャは息を呑み硬直した。
花を持った男―――その人物には見覚えがある
。
見覚えがあるどころか一緒に旅までして、幾度か屈辱を感じた相手。
中肉中背、着ているものはすべて黒ずくめの男―――オーフェン。
今現在、クリーオウと暮らしている張本人である。
つい先程自分は、彼のことを「花などプレゼントしそうにない」と思わなかっただろうか。
さらに旅の時に見た
人相の悪い表情は
、ロッテーシャの
見たこともないようなにこやかなものに変わっている
。
(
なにがあったの・・・!?
)
オーフェンのあまりの豹変振り(
特に顔つき
)に彼女は顔を引きつらせた。
今日は何かの記念日なのだろうか。
だとすると訪ねるには少々間が悪い。
花は一輪だけなのでそんなに大した記念日ではないだろうが。
ロッテーシャが困惑していると、彼は
にこやかに笑いながらかわいらしい構えのケーキ屋
へ入っていった。
不思議この上ない黒魔術士の行動に混乱しながら、彼女は足早にクリーオウの家を目指した。
手紙に記されていた住所の家を見上げて、ロッテーシャは呆然と佇んだ。
この際、家の大きさは関係ない。
見上げる家は白かった
。
窓には真っ白なフリルのたくさんついた真っ白なカーテン
がかけられており、
メルヘンチックなとてもかわいらしい造り
になっている。
いかにも新婚よろしく、といった風情だ。
クリーオウはともかくとして、
オーフェンにこの家はまったく似合いそうもなかった
。
彼はこの家の趣味に反対しなかったのだろうか。
気後れを感じながら、ロッテーシャは家の呼び鈴を押した。
「はーい」
返事をして扉を開けたのは小柄な少女。
金色の髪といっぱいの笑顔がとてもまぶしい。
「あ、ロッテ!」
「久しぶり、クリーオウ。遊びに来ちゃったわ」
「うん、いらっしゃい。ゆっくりしてってね。何日か泊まれるの?」
そう言いながらクリーオウがロッテーシャを招き入れる。
「わたしは大丈夫だけど・・・でもお邪魔じゃないかしら?ほら。オーフェンさんもいるんだし」
「そんなことないわよ。きっと喜ぶわ。オーフェンもここのとこ出張続きでつまんなかったのよね」
「そういえばさっき、オーフェンさん見たわよ」
ロッテーシャは商店街で花を持ったオーフェンを思い出しながら言った。
「ただ旅のころとずいぶん違う印象だったから本人かどうかは疑わしいんだけど・・・。すごく嬉しそうで・・・花なんか持ってたし・・・」
「そうなの?」
と、クリーオウがきょとんとする。
「オーフェンは明日帰ってくる予定のはずなんだけど・・・」
思案顔をする少女を目の当たりにしてロッテーシャは舌打ちした。
(ああ、言わない方が良かったかしら・・・。まさかクリーオウを置いてもう浮気とか!?)
そう考えてみると腹が立つ。
どうして男というものは浮気をするのだろうか。
言ったことを後悔していると、突然彼女の背後の扉が勢い良く開かれた。
信じられないほどの笑みで入ってきたのは―――オーフェン。
右手には彼に
かけらほども似合っていないかわいらしい花
、左手にはケーキが入っているであろうラッピングされた箱。
やはり見間違えではなかったらしい。
彼は雷のような素早さでこちらを抱きしめようと
してくる。
(
えええ!?
)
ロッテーシャが
恐怖に身を竦ませる
と、オーフェンはどういう原理でかあれほどの勢いを一瞬にして殺し、こちらを凝視した。
「オーフェン?おかえりなさい。明日帰ってくるんじゃなかったの?」
するとオーフェンは
彼女の声に反応した
ようにロッテーシャから視線を外し、花とケーキを持ったままクリーオウを抱きしめる。
(
なんなのこの人
・・・?)
確かにここは彼の家であるが、他人の目の前でいきなりクリーオウを抱きしめる行為がロッテーシャには理解できなかった。
おかしいのは自分自身なのか。
軽いめまいがする。
ロッテーシャがよろめいていると、少女がオーフェンの腕の中でもがきだした。
「オーフェン!ちょっと!ロッテが見てるんだから放してってば!」
クリーオウが言うと、彼は彼女を抱きしめたまま振り返る。
ロッテーシャを数秒見つめ、オーフェンがあわてて彼女を解放した。
「ん、ああ、ロッテーシャか。久しぶりだな」
(
さっき目が合ったじゃない・・・!
)
わなわなと肩が震えた。
どうやら彼はクリーオウに夢中で、彼女しか目に入らないらしい。
これが自分を屈辱にまみれさせた男だと思うと、無性に腹立たしかった。
居間に通され、ロッテーシャは布製の白いふかふかのソファに座った。
オーフェンも彼女と机をはさんで向かいのそれに、しぶしぶといった表情で腰を下ろしている。
というのも、クリーオウに「わたしはお茶の用意をするから、オーフェンは座ってロッテと話しててね」と言われたからだった。
彼女はというと、彼が持ち帰った花を花瓶に活け、居間と繋がっているキッチンでお湯を沸かしている。
ロッテーシャが落ちつかなげにうろうろと視線をさまよわせていると、彼が声をかけてきた。
「ロッテーシャ」
「はい」
名前を呼ばれたので顔を上げてオーフェンの方を見る。
彼は慣れない笑顔をこちらに向けていた。
「ロッテーシャは」
「はい」
「ロッテーシャは・・・」
「何ですか?」
「えーと・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
それきり黙ってしまう。
オーフェンは
切羽詰ったように頭を抱えて
いた。
彼の様子からして、クリーオウの言い付け通りに何か話をしようとしたのだろう。
が、そんなものいくらでもあるだろうに、
クリーオウでいっぱいになっている頭では、何も思いつかないらしかった
。
永遠に話が始まらないのではないかとふと思い、ロッテーシャから話を切り出してみることにする。
せっかくなので、一番気になっていることを聞いてみることにした。
「あの、オーフェンさん」
彼女が話しかけると、オーフェンがはっとしたようにこちらを見る。
「先日エドがわたしの家に来たんです。それで彼は『キリランシェロのことが分からなくなった』とだけ言って、また出かけてしまったんです。どうしてそんなこと言いに来たのかも分からないし・・・。何か知りませんか?」
「コルゴンが?」
「ええと・・・はい」
一瞬戸惑ったが、コルゴンという名前をエドに変換させることに成功し、首を縦に振った。
「特に心当たりはないが・・・そういえば少し前に顔を見たな」
「その時はどうでした?何か変なところはありました?」
「別に何も。いつも通りに変な奴だったな。気の効かない」
「はあ・・・・」
「あ、もしかすると」
思い出したようにオーフェンが声を上げ、嬉しそうに両手をぽんと合わせた。
「
クリーオウのあまりのかわいさに驚いておかしくなったんじゃねーか?
」
「クリーオウ?エドはクリーオウに会ったんですか?」
ちらりと彼女の方を見やる。
クリーオウは戸棚から、白い手のひら大の陶器を取り出していた。
「ああ。俺が奴と話してた時にクリーオウが来てな。
あん時のクリーオウもかわいかったんだぜ?
今日も可愛いけど
」
「そうですね・・・」
もはやそれ以上のことを聞くまでもなかった。
エドはおそらく
クリーオウバカに成り果てたオーフェン
を目の当たりにして何か―――例えば今までに築きあげてきた何かを崩され、ショックを受けたのだろう。
ちなみに自分の場合は、彼のクリーオウへの過度の愛情表現も、旅をしていて見慣れていたといえばそうなので、そこまで驚くようなことではなかった。
ただオーフェンは彼女への気持ちを直接的に表すようになっただけのはずだ。
あまりに直接すぎて、大抵の人間がショックを受ける事に変わりはないだろうが。
そう考えていると、オーフェンが満足げに笑い、ぱたぱたと動く少女に目を向けた。
(ノルマクリアってことかしらね)
「クリーオウ、まだか?」
「うーん、ごめんね。もうすぐだから」
「手伝おうか?」
オーフェンがそわそわとソファの上で身じろぎする。
(犬みたいだわ)
クリーオウを目の前にしながら、おあずけと言われた犬。
もういい?と問いかけ、まだ、と否定される。
「大丈夫よ。オーフェンは座って待ってて」
クリーオウの言葉に、彼はしゅんとうなだれた。
その姿はあまりにも哀れで
滑稽
ですらある。
(おもしろいものね)
ロッテーシャは胸中で静かに笑った。
「ごめんね、お待たせ」
と、クリーオウがトレイにティーカップ、皿とフォーク、そしてオーフェンが持ち帰ってきたケーキの箱を持ってくる。
彼は嬉々としてソファから立ち上がり彼女を手伝う。
とても良い亭主っぷりなのだが、確実にそれだけの理由ではないはずだ。
「ロッテ、どれにする?」
彼女に問われて、ロッテーシャがケーキの箱の中をのぞきこむ。
そしてそのケーキの多さに絶句した。
6つ。
いくらケーキが好きといっても、2人で食べるには多すぎるのではないだろうか。
(ケーキって・・・賞味期限あったわよね)
彼女は戸惑いながらクリーオウに微笑みかける。
「えーと・・・この、ブルーベリーソースの乗った・・・チーズケーキをいただこうかしら・・・。それにしてもずいぶんたくさん・・・あるわね?」
「そうなの」
彼女は少し困った顔で同意しながら、ロッテーシャの言ったチーズケーキを取り出す。
「前にオーフェンがケーキ買ってきてくれて、私が喜んだら何だか出張のたびに買ってきてくれるようになったの。はじめは2つだったのに、最近は数が増えてきてるのよね」
「そう・・・」
うなずいてちらりとオーフェンを見やる。
彼はにこにこと笑みを絶やすことなく笑っていた。
「あ・・・じゃあこのお部屋のお花も全部オーフェンさんが・・・?」
部屋中、いたるところに飾られた切り花。
花瓶ひとつひとつは2、3本の花で控えめな美しさを演出しているのだが、花瓶の数が多いため少々にぎやかすぎる気がしていた。
「当たり。これでも減った方なんだけどね。前は花束だったし」
「へぇ・・・」
その他にもクリーオウから聞かされる数々のオーフェンの実態に乾いた笑みで応えて、ふと自分が彼らに贈り物を持ってきたのを思い出した。
荷物の中からごそごそと箱を取り出す。
「これ、お祝いに。お菓子なんだけど良かったら食べて。それと・・・」
言ってもうひとつの土産をかばんから取り出し、テーブルの上に置く。
「ここに来る途中におもしろいものを見つけてね。買ってきたわ」
「何かしら?開けてもいい?」
クリーオウが目を輝かせながら聞いてくる。
ロッテーシャは微笑みながら首を縦に振った。
「どうぞ。でも大したものじゃないわよ」
彼女が開けた箱の中から出てきたのものは2個のマグカップ。
「何これ?」
クリーオウが赤と白のマグカップを両手に持って左右を見比べる。
ロッテーシャはくすりと笑って彼女の両手を合わせた。
カチンと音が鳴り、
片方だけでは意味のないカップが、ペアにすることでハートの形を作る
。
「うわー、おもしろーい!ありがとね、ロッテ」
「ありがとな、ロッテーシャ。ありがたく使わせてもらうよ」
クリーオウが嬉しそうにカップを合わせたり離したりする。
が、ロッテーシャには
彼女よりもオーフェンのほうが喜んでいる
ように思えた。
彼の
態度にはほとんど表れていない
のだが、
口もとが笑みの形に大きく歪み、目の奥は光り輝いて
いる。
そしてとても嬉しそうにクリーオウとハートの形になっるペアのマグカップを見つめていた。
(どうしてなの・・・?)
正直なところ、自分は冗談のつもりでマグカップを購入した。
同時に彼の困る様子も見てみたいという、単なる好奇心だ。
苦笑こそすれ、心のそこから喜ぶとは思ってもみなかった。
もしかしたら彼は、クリーオウと何かおそろいのものがほしかったのかもしれない
。
(
おそろいのハートのマグカップで、ここまで喜ぶ男は・・・嫌
だわ)
ロッテーシャはふとオーフェンとエドを重ねてみた。
出かける度に花とケーキを持ち帰り、公衆の面前で自分を抱きしめ、自分とおそろいの贈り物をもらって喜ぶ彼。
(
・・・気持ちが悪い・・・
)
というより、
できれば勘弁
してもらいたかった。
自分が望むのはさりげなく支えてくれる男であって、今、目の前にいる馬鹿ではない
。
でも、と心の中で付け加える。
(見てるだけならけっこう楽しいわね、この情けなさは)
これからオーフェンのみっともない姿をもっと見れると思うと、心が躍った。
(2003.11.27)
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