それいけ!ダメダメオーフェン vol.10
どうもこんにちはー、ハーティアです。
奴の同僚ってことで日ごろからあいつのダメな姿はさんざん見てるんだけど、順番ならしょうがないね。
今日は休日。
トトカンタの街をひとりでぶらぶらしてたら、偶然にもオーフェンがデート中のところに出くわしたとさ。
ハーティアの経験上、今ここで声をかければオーフェンがどんな態度を取るかだいたい予想できたが、実際クリーオウといる所を目撃するのはめずらしい。
自分が暇なこともあり、ハーティアは好奇心に負けて二人に声をかけた。
「やぁおふたりさん、おそろいで」
軽く手を挙げる。
すると
真正面から声をかけたのにも関わらず、オーフェンとクリーオウはこちらに初めて気付いたようだった
。
自分はすでに三十秒ほど前から彼らの存在を確認しているのに。
きょとんとしたクリーオウのとなりで、オーフェンはあからさまに迷惑そうな顔をした。
彼は嫌な人間にでも会ったかのように、クリーオウの肩を抱いてこちらを避ける素振り
を見せる。
その行動にとても傷つき、ハーティアはあわてて二人の行く手を閉ざした。
人当たりの良い友好的な口調で再度声をかける。
「そんなに冷たくしなくてもいいじゃないか。ね、ちょっとだけでもさ、一緒に話しようよ」
「
いやだ
」
「
いいわよ
」
ハーティアの誘いに、二人は同時に全く違う返事をした。
彼らは何となく息がぴったりのイメージがあるため、答えの相違に感銘を受ける。
自分達の重なった声の違いに気付いたのか、オーフェンとクリーオウはまたもや同時に顔を見合わせた。
特にオーフェンのほうは、
目をまん丸にして口をぱくぱく
させている。
彼女の口から邪魔者の進入を許す言葉が出るとは夢にも思わなかったのだろう
。
「な、なん――」
「
ていうかわたし、一人で行きたいお店があるから、その間二人で暇でもつぶしててくれない?
その後三人で遊びましょうよ」
完全にショックを受けた状態の彼に、クリーオウはすらすらと説明した。
だがオーフェンはそのことに納得できないのか、一生懸命食い下がろうとする。
おろおろと、妻の機嫌を取るように身をかがめ、目の高さを同じにしていた。
「どうしてだ?買い物なら俺も一緒に――」
「いや。オーフェンはここで待ってて」
「だけどな。世の中いろいろ物騒だし、お前一人で行かせるってのは――」
二人の会話をそばで眺め、ハーティアはすぐにぴんと来る。
女性が一人で買い物をしたいと言い張る――その場合はたいてい女性オンリーのアイテムを購入する時だ。
たとえば下着やら化粧品やら。
しかしオーフェンはそれに気付かないのか、無様にだだをこねていた。
会社では上司相手にでさえふてぶてしい態度を取るのに、今は子犬のように相手の機嫌を取ろうと必死になっている。
だがクリーオウはなれた様子で軽くオーフェンをあしらった。
「じゃあわたし行ってくるから。一時間くらいしたらここらへんに戻ってくるわ。オーフェンたちもそのくらいにはここらへんにいてね」
言うが早いが、彼女は嬉しそうに手を振り去っていく。
オーフェンは呆然としながら悲しそうな瞳で彼女の姿が消えるまでずっとそちらを見ていた。
それからしばらくすると、
ぎっ
とこちらをにらみつけた。
殺気さえ容易に感じられる視線である。
尋常ではない彼の気配を察した通行人が、自分達を中心に距離を取った。
離れていく彼らをおろおろしながらながめ、横目でオーフェンを見やる。
彼は
鬼のような形相
をしていたので、ハーティアは
オーフェンが自分を殺そうとする前に
口を開いた。
内心は焦っていたが、女の子の扱いに関しては自分の方が上だという風に、気取って言う。
「だめだよキリランシェロ、怒っちゃ。クリーオウだって一人で買い物したい時くらいあるさ」
「ああ!?てめえまさか
クリーオウが俺をうっとうしがる
とでも言うんじゃねぇだろうな!?」
「そうじゃなくて・・・」
実際は
その通りだと思
いつつも、
自衛のために
彼はきっぱりと否定した。
「女の子は女の子だけの買い物っていうのがあってさ。彼女は君に知られたくないようなものを買いに行くんじゃない?」
「・・・・・・・・例えば?」
かなり鈍感である。
これならいつかクリーオウに見放されそうだと思いつつも口には出さず、ハーティアハ彼が納得し、かつ好みそうな答えを選んだ。
「
下着とか
」
「
し、下着・・・?
」
「うん。
オーフェンはどんなのが好きかしらー
?とか思いながら選ぶんじゃない?」
「
どんなのが・・・・・・
」
瞬間、オーフェンは視線を遥か遠くにやる。
そのまま、どこか遠くを見ている。
しばらく、どこか遠くを見ている
。
何度名前を呼んでも反応がなかったため、ハーティアは深く嘆息して辛抱強く待った。
そして
十分後
、ようやくオーフェンの焦点が戻る。
何事もなかったかのように
、彼は会話を続けてきた。
「
(咳払い)
ああ、ならしょうがないな。待っててやるか
。
あと一時間か・・・
」
「
いや、あと四十五分くらいだね。君がどっかいっちゃってたから
」
地面の落書きを足で消し、ハーティアが適当に答える。
「ま、いいや。その間どっか喫茶店にでも入ってようよ」
「いいぞ。ここにしようぜ」
と、オーフェンは瞬時に決断したのか、いちばん近くの店を指した。
その店名を読んで、ハーティアは顔をしかめる。
「えーそこはやめようよ。あんまりおいしくないんだよね。それよりさ、YAMATOって店にしない?この隣の隣の」
「お断りだ」
「何でさ」
「クリーオウが戻ってきたときに
俺
(限定)
を見つけられなかったら困るだろ」
「はあ?だって20メートルも離れてないよ?それに彼女は『ここらへん』って言っただけで『ここ』とは言ってないし」
「それでもだ。すぐに
俺
(限定)
を見つけられなくて捜させたら
かわいそう
じゃねーか。いやならお前だけ行けよ」
話は終わったとばかりに、オーフェンは一人でその店に入っていく。
かなりの時間待たなくてはならないはずなのに、ハーティアを誘おうとする様子もない。
確かに彼ならば、クリーオウの、妄想(
妄
(
みだ
)
らな
想
(
おも
)
い)をしているだけで三時間でも四時間でも一人で過ごせそう
な気がする。
後で合流することもできるが、ハーティアは話し相手を求めてオーフェンの後を追った。
「
クリーオウはな、距離をおいて見ててもかあいーんだが、やっぱ近くにいるとさらに幸せ倍増なんだよな♥
」
オーフェンはつい先ほどハーティアと別行動でもかまわないようなことを言っていたが、話し相手がいればすぐにこうである。
彼はオーフェンの話を自分の知り合いの女の子達と照らし合わせながら、適当に相づちを打っていた。
注文していたアイスココアは、美味くもないが不味くもない。
それも時間が経つにつれて、どんどん減ってきていた。
だがもうすぐクリーオウがここにやってくる時刻である。
「
こう、ソファに俺が座ってるとするだろ。で、用事が終わってクリーオウも座るんだけど、そーゆう場合はいっつも俺の隣に座ってくるんだぜ?ちょっと手を伸ばせばすぐに触れられる距離にな。こーゆーのって仲が良くなくちゃできないだろ?
」
「
ふーん。へぇ、そう
」
「
でなでな、退屈な時は何か言いたそうにこっちをじーっと見て来るんだよな。そん時の瞳も俺は最高に好きで!すぐに相手してやりたくなるんだが・・・例えばか?んー、そうだなぁ、ぎゅーっと抱きしめるとかか?はっはっ。だから相手してやりたくなるんだが、じらすのもまたいいんだよな!じらしすぎるとあいつもすねるんだが、その怒り方がまた・・・あーっはっはっは?かーわいいんだよなぁ・・・
」
「
おもしろいね
」
「
だろ!?
」
ハーティアは
オーフェンの話を聞かずいい加減に返事
をするが、
彼も同じく自分の返事など聞いていない
。
相手の反応など、どうでも良いのかもしれなかった
。
「
ま、隣に座ってんのも好きなんだけどな、やっぱ俺がいちばんすきなのは、あいつを俺のひざの上に乗せるやつだな。んで後ろからぎゅーっと抱きしめるんだ♥
」
「・・・裸で?」
上の空で聞いてはいたが、そのことだけは耳に入り何となく聞き返す。
別に深く考えたわけでもない、どうでも良い疑問だった。
するとオーフェンも同じく、めずらしく自分の質問に対して表情を変えた。
相変わらず笑顔のままだが、オーフェンの瞳だけが凍りついたような錯覚に陥る。
「はっはっはっ」
「?はっはっ
は!?
」
オーフェンが爽やかに笑ったのでハーティアも同じように笑い返したのだが、その笑みは一瞬にして固まった。
顔の1センチ横を突風が駆け抜けたかと思うと、すぐ後ろで何かの爆発する音がする。
背後で
わー
とか
ぎゃー
とか混乱し泣き叫ぶ声がしたが、ハーティアは目の前の男から視線をそらすことができなかった。
わけがわからぬまま呆然と魔術を放った張本人を見つめ返すだけである。
オーフェンは幽霊が見せるような笑みを浮かべ、底冷えするような声音で言った。
「
お前、今クリーオウの裸を想像しただろ
」
「・・・は?」
「
裸で?って聞いたよな、今。お前、クリーオウの裸想像しただろ?
」
「そ、そんなっ・・・!してないって・・・!」
頭と両手をぶんぶんと振り、体全体で否定する。
彼女のヌードを想像していないことは確かであるし、曖昧な返事をしただけでも致命傷になりそうな気がした。
だがそんな弁解も無駄な努力なのか、彼は瞳をらんらんとさせて顔をこちらに近づけてきた。
「
あいつの裸を見ていいのも想像していいのも世界で
俺
だけだ
。その宿運を破ったんなら・・・
死ぬしかないよなぁ?
」
「待てよキリランシェロ!ほん・・・!?」
本気か、と聞こうとしたがそれは愚問にすぎなかった。
オーフェンの目は据わっているし、殺気はびんびん感じるし、魔術の構成さえはっきりと把握できる。
彼の構成はいたって単純だったが、力押し系の類である。
こちらが全力で防御の魔術を編んで防いだとしても、文字通り止めを刺すまで執拗に追いまわされそうだった。
(
まずい・・・このままじゃ本当に死ぬ・・・
)
「
ああああ・・・あ、ああ!クリーオウ!クリーオウだ!
」
彼の攻撃を回避するため、とっさに口からでまかせを言う。
するとオーフェンはあっさりと構成を散らし、瞳を気味悪いほどきらきらさせてまわりを見回した。
「
クリーオウ?♥
」
他人を呆れさせるくらいの猫なで声でうきうきと呼びかけ、ハーティアの存在を完全に無視する。
と、奇跡的にもクリーオウがひょっこりと姿を見せた。
両手に荷物を持ちながら、てくてくと駆けてくる。
「お待たせ。って、なんだかこのお店壊れてない?どうかしたの?」
「
さあ?
あ、そうだ
。今な、この店でテロがあったんだよ。ゴミ箱がいきなり爆発してな。犯人はもうつかまったけど。だから言っただろ、一人は危ないって。とにかくとっととここから離れるぞ」
クリーオウの肩を抱き、オーフェンはいけしゃあしゃあと言い放った。
拍手を送りたくなるくらいの身代わりの早さである。
「待ってよぉ〜・・・」
ハーティアは放心しながらも、興味本位で彼らのデートに加わった。
(2005.7.12)
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