ダメダメオーフェンRe. vol.2
みなさん、お久しぶりです。
クリーオウの母親のティシティニー・エバーラスティンです。
クリーオウが家を出て約20年、もう会えないかもしれないと覚悟もしていましたが、愛しい娘が帰ってきました。
それも、旦那さんを連れて。
本当に本当に、なつかしいですわ。
「その節は大変失礼しました。いつか伺いに来なければと思っていたんですが、身動きが取れず結局今になってしまいました」
そう言ってオーフェンはティシティニーに対して
深く頭を下げ
た。
新大陸でも重要な位置にいる彼は、本来ならば頭を下げてはいけない人間である。
だからこそ、オーフェンの心遣いは好ましいものだった。
娘のクリーオウも、自分の夫の行動を見ても
にこにこと笑って
いる。
おそらく嬉しいのだろうと、母であるティシティニーは思った。
クリーオウは年に数回手紙をくれるので(その中にオーフェンからのメッセージも少し入っている)元気であることと幸せであることも知っている。
どうやら真実らしいので、ティシティニーは安心した。
そんな堅苦しいあいさつもそこそこに、娘夫婦を応接間へと案内し、ゆっくりと語り合う。
オーフェンは仕事があるので2日ほどしか滞在できないらしいが、娘はもうしばらくいられるということだった。
「ラッツベインたちも誘ったんだけど、どうしても行かないって言い張っちゃって。だからわたしたちだけなの。ごめんなさい、お母様」
「そう……。仕方ないわね、遊び盛りですもの」
孫が来ないのはしごく残念だが、クリーオウとの時間がたくさん取れるだろうから、良しとしておく。
きっと孫たちは、案内役にとクリーオウを引っ張りまわすだろう。
そうなると、それはそれでまた残念なのである。
「それでどうなの、新大陸は?栄えているとは聞くのだけれど、あなたはどこに住んでるの?」
娘婿は学校の校長をしており、他にも重要職に就いているらしいので、経済面での心配はあまりしていない。
けれども、どんな暮らしをしているのかは気になった。
するとオーフェンが
でれっ
と笑い、ぽりぽりと頭をかく。
「
俺たちが住んでいる
のはまぁ田舎なんですけど。家もそれほど大きくないのですが、
クリーオウが住み心地良くしてくれてますよ♥
」
「まぁ、良かったわ」
娘を褒められれば、単純に嬉しい。
ティシティニーが笑うと、
オーフェンの頬がさらに崩れ
た。
「俺は寮生活と一人暮らししか知らなかったんですが、
家族ってこんな良いものなんですね
。ティシティニーの教育のたまものだと尊敬します」
「ま、とーぜんよね」
オーフェンの隣で、クリーオウが自慢げに胸を張る。
その姿がとても自然なので、こういう会話は初めてではないのだろうと察した。
慣れていないと、あわてたりぎこちなくなったりするものだ。
「どうもありがとう、オーフェンさん。クリーオウは元気すぎる娘だから、いつも騒がしくしているでしょう?」
「そうですね。少し落ち着けと言う時もあるんですが」
「なによー」
「
はいはい♥
彼女のおかげでにぎやかな家庭だと思います。
ありがとな
」
そう言って
オーフェンはぽんとクリーオウの頭に手を置いた
。
「…………」
そのしぐさに
クリーオウも照れていたが、ティシティニーもまた照れて
しまう。
彼女たちは思っていたよりもはるかに仲が良いらしい。
「今回はここに来るのをとても楽しみにしてたんですよ。まあ、今更という気もするんっですが、
クリーオウの住んでいた家というのを一度じっくり見てみたく
て。
幼いころの写真なんかも残っていたらそれも
。前お邪魔したころは、思いっきり他人でしたから」
言いながら、オーフェンは苦笑した。
彼が家族になって初めてこの家に訪れたのだ――以前とは気持ちもだいぶ違うのだろう。
事前に寄こしてきた手紙でそう言ってくるのは何となく予想できていたので、ティシティニーは快くうなずいた。
「今日は泊まっていらっしゃるのよね。一応客間もご用意しましたけど、
クリーオウの部屋も掃除してあるわ。好きなだけご覧なさい
」
瞬間、
オーフェンは目を輝かせ
て隣のクリーオウを見た。
期待に満ち満ちた、嬉しそうな瞳
。
喜んでいるのだということは、ティシティニーでさえすぐにわかった。
長年夫婦をしているクリーオウには慣れたことなのか、質問しなくても通じるようだった。
「うん、まぁ……いいけど。べつにあんまりおもしろくないと思うわよ……
ってわかったから
。それにしてもずっとそのままにしてあるの?」
最後はティシティニーに、少し驚いた表情で。
それに彼女はにっこりとうなずいた。
「親ですもの」
クリーオウがいつ帰ってきてもいいように、ずっと大切にしていた。
すると
オーフェンが手を叩いて讃えて
くれる。
「俺にも分かりますよ、ティシティニー。親ってそういうものですよね。子供がかわいくてかわいくて。きっと、伝わってるのは何十分の一なんだろうなと思うくらいで」
「そうね」
「そう……かもね」
同意するのを見ると、彼女もまた親になったのだと実感する。
自分の知らないうちに、すっかり大人になってしまったようだった。
きっと、そんなものだろう。
「
家族っていい
ですよ、ほんとうに。仕事でへとへとになっていても、
家に帰れば温かい夕食と妻♥
が出迎えてくれる。時々夢じゃないかと疑ってしまうくらいに
幸せです
」
「……ホントに?」
「ま、実はな。つらいことも多かったけど、家族といる時間はいつでも幸せだった。いつだって今が最高だと思うんだけど、それがずっと続いてるんだよな。
今は子供たちも手がかからなうなってきて、夫婦の時間を取りやすくなって最高
かな?子供もやっと聞き分けてくれるようになったし。
クリーオウも俺にかまってくれるようになったし♥
」
柔らかく微笑みを浮かべるオーフェンは、
見ていて恥ずかし
くなるほどだった。
目のやり場に困る
というのか。
特にじゃれ合っているわけでもないのだが、同じくらい照れ臭い。
けれどもそれを見て思うのは、やはり感謝だった。
自分の娘がこれほど愛されていて、嬉しい。
「クリーオウのことが好きなのね、オーフェンさん」
「はい、とても。
愛しています
」
「ちょ、オーフェン。やめてよ、お母様の前で……!」
めずらしく顔を真っ赤にしたクリーオウが、おろおろとティシティニーとオーフェンを見比べる。
それを知りつつ、オーフェンは続けた。
「
お義母さんの前だから言う
んだろ。本来なら結婚する前に言わなくちゃいけないことなんじゃないのか?」
「ああ、娘さんをください、という儀式ね」
口に手を当てて、ティシティニーが会話に加わる。
それにオーフェンはいたずらをするような表情で笑った。
「そうですよ。エキントラさんがいたら殴り飛ばされたでしょうかね。どこの馬の骨とも分からん男に大事な娘を――とか」
「そこでオーフェンさんは土下座するのよね。必ず幸せにしますので、どうか!とか」
「お母様まで――」
呆れたようなクリーオウが、それでも止めようと機をうかがっている。
こんなものだ。
好きな娘をからかって遊ぶのは、本当に楽しい。
二人に会うのは本当に久しぶりだったが、いつも一緒にいたかのように時間はとても自然に流れていった。
「
オーフェンさんは本当にあなたのことが大好きなのねぇ
」
日が暮れて、ようやく母と娘の二人きりになってから、ティシティニーはしみじみとつぶやいた。
オーフェンは今、風呂に入っている。
昼間も時々気を利かせてくれようとするのだが、やはり
一人では退屈なのかすぐにクリーオウのところへ戻って
きていた。
好意的に解釈するのなら、妻の家族を大切にしている。
と、クリーオウも苦笑して、しみじみと肯定してきた。
「そうなのよね」
「魔王と呼ばれているわよね。それにしてはかわいらしい旦那さんだわ」
「ホント、
もうべったり
よ。
人前ではちゃんとしてる
んだけど、二人になると子供みたい。甘えん坊だし」
言いながら、クリーオウは深々とため息を吐いた。
手紙にはそんなことを書いて寄こさないが、本音なのだろう。
けれども深刻そうに見えないあたり、幸せだということがうかがえる。
あの時クリーオウを送り出した自分は間違っていなかったということだ。
そのことに深く満足し、ティシティニーは成長した娘との会話を心から楽しんだ。
2010.11.27
帰還シリーズ第二弾。
ダメダメオーフェンも、義母の前ではさすがに自重しているようです(笑
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