□ ねぇ、キスして? □


クリーオウは最近すこぶる機嫌が良かった。
それというのも、あのオーフェンと恋人同士になったからである。
自分でも奇妙な気もするが、何度も確認したことであるし、事実は事実だった。
事実はありのまま受け入れた方が良い。
だからなのか何なのか、もう自分でもわけがわからなくなっているが、クリーオウは彼に会えることを非常に楽しみにしていた。
明確な用事がなくてもオーフェンに会い、話をする。
これまでもそうだったが、それがさらに頻繁になっていた。
少々しつこいような気もしたが、そうしたいからそうしている。
こういうことは、考えるよりも心に従った方がいい。
今日も今日とて浮き立つ気分で、クリーオウは恋人の姿を探していた。
拠点地を適当に歩き回っていると、すぐに見つかる。
オーフェンは木陰になった場所に座り込み、難しそうな表情で何かの書類を読んでいた。
そばには誰もいない。
クリーオウはにんまりして、彼の名前を大声で呼んだ。
「オーフェーン」
ついでに手も振ってみる。
声が届くか際どい距離だったにも関わらず、彼はすぐにこちらに気付いたようだった。
いつもしているように、ほんの少しだけ苦笑して、彼女がそばに行くのを待っている。
オーフェンのもとにたどり着くと、クリーオウは彼の隣にくっついて座った。
とびっきりの笑顔を向ける。
そうしたらオーフェンもきっとつられて笑うだろう。
そう予想したのだが、オーフェンはまゆを寄せて苦い表情を見せてきた。
「?なに?」
なぜ彼がそんな顔をするのか分からなかったので、首をかしげて聞いてみる。
するとオーフェンは、さらに目を逸らした。
「なんつーか、やけに機嫌がいいなと思って。そういう時はたいてい何か裏があるんだよな」
嫌な思い出でもあるのか、オーフェンは目を逸らしたままうめく。
つられて、クリーオウも渋い顔を作った。
せっかくこちらは上機嫌でいるというのに、そんなことを言われても嬉しくない。
「わたしって、おねだりするときしか笑わない?」
「ん?そーでもないけど……」
「そーでもないけど?」
「今回のはなんか裏がありそうに見えてな」
またもや苦笑して、オーフェンは彼女の頭をぽんぽんと叩いた。
「んで?今日は何が目的で?」
「やっぱり裏があると思ってるんじゃない!」
わめいて、クリーオウは両手をばたばたと振りまわす。
それにオーフェンは迷惑そうに身を引いて、じっとこちらを見てきた。
「あーはいはい、わかったから。悪かったよ」
投げやりに言って、ひらひらと手を振る。
クリーオウはひとしきり暴れ終え、むっとして木にもたれかかった。
オーフェンの態度は、恋人同士になる前とあまり変化がない。
もしかして嬉しいのは自分だけなのかと、やや不安になってくる。
憮然してと木にもたれていると、しばらくしてオーフェンが顔をのぞきこんできた。
「もしかして本当に裏がなかったとか?」
「悪い?」
彼の質問に、刺々しく返す。
しかしオーフェンはふっと笑うと、こちらの髪を撫でてきた。
その感触は、とても心地良い。
「オーフェン」
「やっぱおねだりか?」
呆れたように、オーフェンは半眼になる。
「だめ?」
「……言ってみな」
「キスして」
オーフェンの黒い瞳を見つめて、ねだってみる。
彼はきょとんとした。
いつもは吊り上った目をめずらしく丸くして、まばたきを繰り返す。
「だめ?」
もう一度同じ言葉で尋ねる。
と、オーフェンはきょとんとした表情のまま、指で頬をかいた。
「だめじゃないけど。……いいのかなと思って」
「どうして?」
「最近けっこうしてるから、かな」
「どういう意味?」
「あんまりやりすぎてもお前が嫌がるんじゃないかと。だから、がまんできるときにはがまんしとこうかと」
「ふうん?」
彼にもいろいろあるらしいが、よく分からなかったのであいまいな声を出す。
その間にも、オーフェンはゆっくりと近づいてきた。
それを、どこかぼんやりとした頭で理解する。
「お前からしてきてもいいんだぞ?」
「オーフェンからしてほしいの」
ささやきながら、目を閉じる。
それとほぼ同時に、オーフェンと唇が重なった。






2009.7.17
コメディかつラブいのを書きたい気分でした。
クリーオウ⇒そっけない(ような)オーフェンでキスが自分テーマ。

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