「なぁクリーオウ」 「ラッツはもう寝てくれた?」 「ああ。……あのな」 「どうしたの、そんな深刻な顔しちゃって」 「今日、俺ラッツベインと本屋に行ってきたんだ」 「うん」 「そこで心底怖ろしい絵本を読んじまってな」 「どんな?」 「……どうしてわくわくしてる?」 「だって怖ろしいんでしょ?」 「そうだけど、俺がこんなに怯えてるんだから、もっとこう……」 「どんな話だったの?」 「……まぁいいや。あのな、小さい男の子の話だったんだけど」 「うんうん」 「その男の子は父親と二人暮らしなんだと。母親は早くに病気で死んだとか」 「うんうん」 「おそろしい!」 「……ん?」 「考えただけでも身震いが」 「……どうゆーこと?」 「え?だって、怖いだろ」 「怖いって、まだ男の子の境遇が出てきただけじゃない。どんなお話だったの?」 「いや、話自体はどーでもいいだろ。あえて言うなら普通の冒険だ」 「それのどこが怖いの?」 「怖いだろ恐怖だろ!俺はしばらく震えが止まらなかった」 「だからどうして?」 「もしお前が俺を置いて先に死んだらとか思ったら……」 「ああ、境遇を重ねちゃったの?」 「酷い話だよな。そんなんでどーやって生きてけってんだよ」 「魔術士は自立が基本なんでしょ?」 「人は自立しない」 「そーゆう考えになっちゃったのね……」 「そんなことになったら俺……」 「はいはい。よしよし。大丈夫大丈夫」 「その親子はどうやって立ち直ったんだろうな。俺には絶対無理だと思うんだよ」 「うん。でも案外平気なのかもしれないわよ?」 「そんなはずないだろ」 「そうかしら。わたしのお母様も、お父様が死んじゃったときは悲しんだけど、でもちゃんと元気よ」 「影でこっそり泣いてるんじゃないのか?」 「うーん。子供もいるし、どうにかなるのよ」 「どうにもならないだろ。奥さんが死んだら後を追うみたいに旦那がころっと逝く話って良く聞くぞ」 「たしかに聞くわね。逆のパターンってあんまりないけど」 「だろ。男の場合はそうなんだよ」 「そうなのかもね」 「…………う」 「泣かないでよ。想像でしょ、オーフェンの」 「……!そうだよな!死んだりしないよな!」 「うん、たぶん。でも家系は代々短命らしいわよ」 「……っ!」 「ああっ!だだだだ大丈夫だったら!」 「ほんとにか!?嘘じゃないよな!?」 「平気。とっても元気よ」 「そうか?信じていいな?」 「信じていいわよ。ってなんか変な疑いよねそれって」 「体調が悪くなったらすぐ言ってくれよ」 「オーフェンもね」 「ああ。ちゃんと言えよ」 「はいはい」 「今度二人で健康診断行こうな」 「……まだ若いんだけど、わたし」 「若いからってなんだ!病気は早期発見が大切なんだぞ!」 「はいはい」 「なんか今日は眠れそうにないんだが」 「落ち着いてオーフェン。大丈夫だから。ずっと手握っててあげる」 「抱きしめててもいいか?」 「うん。いつものことだしね」 「大丈夫だよな?」 「うん。大丈夫大丈夫」 「死なないよな?」 「死なないわよ。昔に比べたら危険なことなんてまったくないんだし」 「そうだよな」 「そうそう。大丈夫よ、オーフェン」 「うん」 「うん、大丈夫。おやすみなさい、オーフェン」 「……おやすみ」 2009.7.13 オーフェンてクリーオウがいなくなったら廃人になりそうなイメージです。 クリーオウは平気そうなイメージ(笑) |
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