□ 十二日目 □


最近は、恋人同士でもないのにオーフェンの隣で目覚めるようになていた。
そのことについて、彼はもう何も言ってこない。
はじめの方はよく説教されていたが、ちっとも効果がないため、途中であきらめたらしかった。
がっくりと落とした肩が悲しげに見えたことを覚えている。
クリーオウ自身も、ここまでしようとは考えていなかった。
けれどオーフェンのいるベッドは居心地が良すぎて、止められなかったのだから仕方がない。
お互いにその件については触れないよう、暗黙の了解のようなものができあがっていた。
「そろそろ寝るか」
トランプを持ったまま、オーフェンが壁にかけられた時計を見やる。
十時。
それほど遅い時間というわけでもないが、限りある資源は無駄遣いできない。
船のルールには、夜更かしはしないようにとあった。
「逃げる気?」
聞き捨てならないせりふに、クリーオウがぎろりと彼をにらむ。
オーフェンの場合、ガス灯代わりになる魔術がある。
それを使えば、消灯時間など関係がなかった。
だというのに、オーフェンは渋い顔を作る。
「昨日はお前の勝ち逃げだっただろうが。明日も早いんだからもう寝るぞ」
「ぶー」
親指を下に向けてブーイングしてみるが、無視された。
仕方なく、ベッドに散らばったトランプを片付ける。
すべて箱にしまい終え、彼女はちらりとオーフェンを見た。
今まで彼のベッドの上でトランプをしていたのだが、このまま眠った方が早い。
が、オーフェンはそんなことは許しませんと説教をする母親のように眉をひそめた。
残念に思いながら、のそのそと自分のベッドに戻る。
オーフェンはすぐに明かりを消し、いつものように言ってきた。
「おやすみ」
不機嫌な声ではない。
「おやすみなさい」
彼女も告げて、少しだけ良い気分で目を閉じた。


夜中。
寝返りをうったとき、オーフェンに触れて彼女は眠りから覚めた。
が、目は開けない。
このまま目を閉じていれば、きっとすぐに眠りに落ちるはずである。
――いつからか、この距離になった。
はじめはもっと遠かった気がする。
スイートルームのベッドは部屋に合わせたように広く、一台で大人三人は眠れるだろう。
だから最初、彼女はオーフェンのベッドの隅を借りるつもりで眠っていた。
それで充分だったから。
それが今では堂々とベッドの真ん中を陣取り、こうして時々オーフェンにぶつかっている。
今回は運悪く、オーフェンを起こしてしまったようだった。
小さなうめき声が聞こえて、こちらを向くのが感触で分かる。
彼女は目を閉じているが、暗闇の中でもオーフェンの視線を感じた。
眠りを妨げられて、彼は怒っただろうか。
半分眠った脳で考えていると、オーフェンの手が彼女の背中にまわされた。
ほんの少しだけ抱き寄せられ、わずかに体が触れる。
驚いて目を開けるが、彼はすでに眠っているようだった。
目を閉じて、規則的な呼吸を繰り返している。
無意識なのだろうか。
それとも、意識的にしているのだろうか。
オーフェンの寝顔を見つめていても、それは分からなかった。
ただ嬉しくはある。
抱き寄せられたことと、彼の腕の重みを感じることが。
昼間は恥ずかしくて、オーフェンにくっつくことはできない。
だが夜なら、寝ぼけていたという言い訳ができる。
クリーオウは目を閉じて、オーフェンの胸に頬を寄せた。






2009.4.21
同室で眠るネタとして、いったんここまで妄想しました。
実はラブラブという。
オーフェンがんばるねー(涙

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