彼女と同じ部屋を使うようになってから、十八日目。 いつからか、クリーオウが彼のベッドにもぐり込んでくるようになった。 夜中に目を覚まし、ただ彼の隣で眠ろうとする。 癖になったのかもしれない、とオーフェンはぼんやりと思った。 厳しい旅をした反動か、人のいる近くで眠りたいのだろう。 ただそれが、オーフェンの隣というのが問題だが。 他の男ではもっと問題なので、それだけはまだ良かったのかもしれない。 今夜もまたクリーオウは彼の毛布の中にやってきて、もぞもぞと体勢を整えた。 そしていくらもしないうちに、とても安らかな寝息をたてはじめる。 それは世界中の幸せを手に入れたかのような、無防備な寝顔だった。 何日もこの光景をながめていれば、さすがに慣れる。 加えて、自分のベッドで寝かせるわけにはいかないという、紳士的な義務感も失せる。 もう好きなようにすればいい。 いちいち気を使ってクリーオウを隣のベッドへ運ぶ作業にも疲れた。 オーフェンがベッドを移動したとしても、最近では刷り込みをした雛鳥みたいに追ってくる。 何度も小言を言ったし、忠告もした。 クリーオウもその度うなずくのだが、どうも寝ぼけると忘れてしまうらしい。 いい加減めんどうになり、オーフェンは彼女の好きにさせることにした。 特別寝相が悪いわけではないし、ベッドも広いのでそれほど邪魔にはならない。 猫のようなものだ。 追い出しても、いつの間にか隣にいる。 こちらも表面上、迷惑そうな態度を取るが、実はそれほど嫌なものではなかった。 彼女の幸せそうな寝顔を見るとなぜか笑みがもれる。 オーフェンはクリーオウの金髪を撫でて、自分もまた眠りについた。 クリーオウと同室になって、良いこともある。 それは彼女が毎朝起こしてくれるようになったことだった。 朝に弱いオーフェンは、寝過ごしてしまうことが多い。 普段はそれで問題なくても、早い時間からある会議に遅れると、ひんしゅくを買ってしまう。 彼女と生活を合わせるようになり、人として健康的な生活を手に入れた気がした。 今朝は、太陽の光を感じて、自力で目覚める。 そして硬直した。 目の前に、明るい金色の髪が流れている。 夜の間は寝ぼけていて普通のことだと受け止めていたが、昼間に考えてみると衝撃的だった。 驚いてベッドから跳ね起きる。 「……ん?」 その振動で、クリーオウが目を覚ましたらしかった。 ごしごしと目をこすり、ころんと寝返りをうつ。 クリーオウは片目に手の甲を押し付けた格好のまま、オーフェンを見て固まった。 「………………」 「………………う」 気まずい。 オーフェンは悪くないのだが、それでもこの状況は気まずかった。 とりあえず服は着ている、お互い。 「…………だから勝手に来んなって何度も言っただろうが」 「……。うん。おはよう」 「……おはよう」 クリーオウは怒り出すわけでもなく――多少は驚いているようだが――平静にあいさつを返してくる。 怒られる筋合いもないが、あまりにも普通すぎてオーフェンは拍子抜けした。 害がないのなら良いが。 彼女は満足そうにうなずくと、ぐっすり眠ったというように機敏な動作でベッドから降りた。 荷物をあさり、服を抱えて部屋から出ていく。 パタンと扉が閉まり、呆然としたままの彼だけが部屋に残された。 「……なんだかな」 複雑な心境で、オーフェンはうめいた。 オーフェンが気にしすぎているだけなのだろうか。 女心はどうも理解できそうにない。 彼は大きく伸びをして、ゆっくりとベッドから這い出した。 2009.4.21 船旅が長いものになればいいと思う。 ってさすがにもう到着してますか。 でも彼らのペースを考えると、こんくらいかかりそうで。 もう船下りてても何でもいいです(涙 一緒の部屋で眠っているだけという設定でお願いします(涙 もしくは船を拠点に活動してるとか。 そんな感じで。 |
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