□ 八日目 □


彼女と同じ部屋を使うようになってから、十八日目。
いつからか、クリーオウが彼のベッドにもぐり込んでくるようになった。
夜中に目を覚まし、ただ彼の隣で眠ろうとする。
癖になったのかもしれない、とオーフェンはぼんやりと思った。
厳しい旅をした反動か、人のいる近くで眠りたいのだろう。
ただそれが、オーフェンの隣というのが問題だが。
他の男ではもっと問題なので、それだけはまだ良かったのかもしれない。
今夜もまたクリーオウは彼の毛布の中にやってきて、もぞもぞと体勢を整えた。
そしていくらもしないうちに、とても安らかな寝息をたてはじめる。
それは世界中の幸せを手に入れたかのような、無防備な寝顔だった。
何日もこの光景をながめていれば、さすがに慣れる。
加えて、自分のベッドで寝かせるわけにはいかないという、紳士的な義務感も失せる。
もう好きなようにすればいい。
いちいち気を使ってクリーオウを隣のベッドへ運ぶ作業にも疲れた。
オーフェンがベッドを移動したとしても、最近では刷り込みをした雛鳥みたいに追ってくる。
何度も小言を言ったし、忠告もした。
クリーオウもその度うなずくのだが、どうも寝ぼけると忘れてしまうらしい。
いい加減めんどうになり、オーフェンは彼女の好きにさせることにした。
特別寝相が悪いわけではないし、ベッドも広いのでそれほど邪魔にはならない。
猫のようなものだ。
追い出しても、いつの間にか隣にいる。
こちらも表面上、迷惑そうな態度を取るが、実はそれほど嫌なものではなかった。
彼女の幸せそうな寝顔を見るとなぜか笑みがもれる。
オーフェンはクリーオウの金髪を撫でて、自分もまた眠りについた。


クリーオウと同室になって、良いこともある。
それは彼女が毎朝起こしてくれるようになったことだった。
朝に弱いオーフェンは、寝過ごしてしまうことが多い。
普段はそれで問題なくても、早い時間からある会議に遅れると、ひんしゅくを買ってしまう。
彼女と生活を合わせるようになり、人として健康的な生活を手に入れた気がした。
今朝は、太陽の光を感じて、自力で目覚める。
そして硬直した。
目の前に、明るい金色の髪が流れている。
夜の間は寝ぼけていて普通のことだと受け止めていたが、昼間に考えてみると衝撃的だった。
驚いてベッドから跳ね起きる。
「……ん?」
その振動で、クリーオウが目を覚ましたらしかった。
ごしごしと目をこすり、ころんと寝返りをうつ。
クリーオウは片目に手の甲を押し付けた格好のまま、オーフェンを見て固まった。
「………………」
「………………う」
気まずい。
オーフェンは悪くないのだが、それでもこの状況は気まずかった。
とりあえず服は着ている、お互い。
「…………だから勝手に来んなって何度も言っただろうが」
「……。うん。おはよう」
「……おはよう」
クリーオウは怒り出すわけでもなく――多少は驚いているようだが――平静にあいさつを返してくる。
怒られる筋合いもないが、あまりにも普通すぎてオーフェンは拍子抜けした。
害がないのなら良いが。
彼女は満足そうにうなずくと、ぐっすり眠ったというように機敏な動作でベッドから降りた。
荷物をあさり、服を抱えて部屋から出ていく。
パタンと扉が閉まり、呆然としたままの彼だけが部屋に残された。
「……なんだかな」
複雑な心境で、オーフェンはうめいた。
オーフェンが気にしすぎているだけなのだろうか。
女心はどうも理解できそうにない。
彼は大きく伸びをして、ゆっくりとベッドから這い出した。






2009.4.21
船旅が長いものになればいいと思う。
ってさすがにもう到着してますか。
でも彼らのペースを考えると、こんくらいかかりそうで。
もう船下りてても何でもいいです(涙
一緒の部屋で眠っているだけという設定でお願いします(涙
もしくは船を拠点に活動してるとか。
そんな感じで。

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