□ その人選は □


オーフェンが魔術で顔の腫れを癒してやったのだが、クリーオウはまだ頬を気にしている。
魔術特有の違和感がまだ残っているのだろうが、そういうものだと説明した。
「他は大丈夫か?」
彼女の濡れた金髪をタオルで拭いてやりながら聞く。
「ん?うん……大丈夫」
眉間にしわを寄せながら、彼女はそう答えた。
思わず溜息を吐く。
よくよく見れば細かい傷だらけで、オーフェンはそれを見つける度呪文を唱えて癒していった。

「そもそもあんな奴を頼りにするからこんなにボロボロになるんだよ」
右腕を上げさせて、けががないか調べる。
すぐに打撲を見つけたため、彼は小さく呪文を唱えた。
「頼ったんじゃないわよ。利用しただけ」
クリーオウは病院患者のように大人しくしているが、これにははっきりと不服があるらしい。
口を尖らせて反論した。
彼女に取っては重要なことだが、オーフェンにしてみれば大した差ではない。
けれど正直に告げるとクリーオウが怒り出すことが分かっていたので、適当にうなずいてやった。
「はいはい。けど奴はきっぱりと人選ミスだと思うぞ」
「他にどうしろっていうのよ?」
「ハーティアとかいるだろ」
「でもわたし、その人のこと良く知らないし」
顔は覚えているのだろう、彼女は思い出すように視線を上に向ける。
それを見るともなしに見やりながら、今度は彼女の左腕を手に取った。
やはり二の腕のところに、小さいが擦り傷がある。
「お前が知らなくてもティッシがいるだろ。頼めば何とかなったと思うんだけどな」
「そうかしら」
疑わしそうに、クリーオウ。
たしかに何の見返りも要求せず、アーバンラマに送り届けろというのも無理があるかもしれない。
しかしコルゴンと一緒に旅をする無茶に比べれば、ハーティアのほうがずっとマシに思える。
彼もかなりの実力者なので、魔術を使えないコルゴンと同等の実力があるはずだった。
「あんな話の通じない奴よりはずっと気楽だったと思うんだけどな」
女の扱いにもなれている。
そこまで考えて、オーフェンはぎくりと動きを止めた。
「?」
不思議そうにする彼女の頭をタオルの上からぽんと叩く。
そのまま頭をぐりぐりと撫でながら、オーフェンは続きをごまかした。
ハーティアであれば、クリーオウをこんなに傷だらけにしなかっただろう。
だが、今度は別の意味で危険ではありそうだった。
オーフェンの考えすぎだろうが、長い間付き合いがないため確信はない。
ある意味コルゴン以上に危険なように思えた。
「……難しいもんだな」
頼りになりそうな人間の顔を次々と思い浮かべるが、誰もがどこかで欠点がある。
旅の危険性を考えると、無事にアーバンラマに着くことさえ危うい。
最低限の目標を達成できたことを思えば、人選は正しかったといえる。
が、クリーオウをこんなに傷だらけにされては、認めたくはなかった。
「やっぱり俺しかいないか」
「オーフェンは論外でしょ」
不思議そうにしていたわりには、ずばりのことを答えてくる。
自画自賛していたことであったので、かなりばつが悪い。
オーフェンは顔を歪めて、タオルで乱暴に彼女の髪を拭いた。
「他にけがは?」
「ん?大丈夫」
「…………」
いまいち信用できない。
先ほども大丈夫と答えていたが、切り傷は打撲はたくさんあった。
まだ見ていない場所にも、同じような傷があるだろう。
とはいえ、年頃の娘に治療するから服を脱げとは言えるはずもない。
「今治しておかないと傷跡が残るかもしれないぞ」
オーフェンが脅しにも似た忠告を口にする。
告げると、クリーオウは真面目な表情で深く悩み始めた。






2009.4.11
本当に意味のない話を書いてすみません。
でもなんかこんな話が浮かんできて、せめて妄想なら書いたっていいじゃない・・・!と。
オチがない話ですね。
しかも一週間ぶりに文章を書いたからか分もぐだぐだ。一週間でそんなんになるもんですねー。

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送