□ 夢で逢いました □


平日の朝は何かとあわただしい。
彼が仕事へ行くまでの時間は、あってないようなものだ。
身支度を整え、朝食を食べ、準備をする。
たったそれだけのことなのだが、あまりゆっくりしていられる時間はなかった。
とはいえ、朝食を一緒に食べて、話しをする時間くらいはある。
クリーオウは目玉焼きの黄身をフォークで潰しながら、目の前にいる夫に笑いかけた。
「昨日ね、夢にオーフェンが出てきたの」
「ん?」
唐突な話題だったからか、オーフェンはきょとんとする。
口をもぐもぐさせて飲み込んでから、不思議そうに聞き返してくる。
「夢?」
「うん。わたしとオーフェンが再会したときの夢」
「ああー」
何か気恥ずかしいものがあるのか、彼は言葉を濁して目を逸らした。
「まぁあの時はびっくりしすぎてわけ分かんなくなってたからな……」
「わたしの夢は実際の再会じゃなくてね、ほんとにただの夢なの。だからパラレルよね」
「ふーん。どんな?」
興味があるのか、それともとりあえず聞いておこうというのか。
あまり興味のあるような声ではなかったが、彼は促してきた。
「まずお花畑でね、地人兄弟が出てきたわ」
「ふーん?」
言いながら、夢に出てきた光景を思い出す。
丘というよりは土手のような場所の裾で、彼女はなぜか花冠を作っていた。
しかも地人兄弟をそばに従えてである。
「お花畑はホントに色とりどりでたっくさん咲いててね、パステルカラーだったわ。お花も多すぎるし、メルヘンっぽく」
「ほぅ」
空は暗かった気がするが、夢なのでそんなものなのかもしれない。
「で、そこはそれだけで終わっちゃったんだけど」
「何だそれ」
拍子抜けしたように、オーフェンが肩をコケさせる。
クリーオウも対抗して口を尖らせた。
「そんなこと言ったって、夢なんだからしょうがないじゃない」
「そらそうだけど……。俺は?」
どこか残念そうな顔で、オーフェン。
最初に期待させたからだろうか。
それに彼女はにっこりと笑った。
「次はいきなり場面が変わっちゃってね。というより、わたしが覚えてないだけかもしれないけど」
「俺の登場か?」
「そうなの。わけ分かんないんだけど、いきなり再会なのね。目が合った瞬間に二人で駆け寄って抱きしめ合ってたし」
「……はは」
彼は苦笑いをすると、ごまかすようにコーヒーに口をつける。
実のところ、その動作がどういう意味を表すのかはわからなかった。
不思議に思って首をかしげながら、続ける。
「でも、こっからがすごいとこなのよ!」
「……というと?」
良い予感がしなかったのか、彼があまり聞きたくなさそうな声を出す。
コーヒーカップで半分顔を隠していた。
「うん、あのね。二人して号泣して抱きしめ合ってるんだけど」
「号泣……」
「オーフェンたらいきなりわたしにキスしてきたのよ!それはもういやらし〜く」
「…………」
「わたしはびっくりしてるんだけど、まぁいいかなーってされるがままになってるの。そんな夢だったわ」
「…………」
夢の中で彼女は、いきなりキスしちゃうの?と思っていた。
オーフェンいくら何でも再会したばっかりなのにわたしたち、とか何とか。
でもクリーオウは嬉しかったので、ただ彼にしがみついていた。
夢なのだが。
彼女はにっこりと微笑んで、オーフェンからの反応を待つ。
するとどういうわけか、彼は少々悩むような表情で言ってきた。
「……欲求不満か?」
ぽつりと、一言。
それにクリーオウは顔を真っ赤にして立ち上がった。
「なんでっ!?」
「いや、夢の中でキスとか欲求の表れだろ?けど、あれじゃ足りなかったか。悪かったな」
「そんなんじゃないのよ!変な風に考えないで!」
オーフェンとは中略なのに、そんな風に思われるなんて恥ずかしいにもほどがある。
クリーオウはにらみつけて思い切り抗議するが、逆に彼は嬉しそうにしていた。
「ちょっと今は時間がないからできないけど、キスくらいならいけるだろ。おいで」
「おいでって……」
普段は言わないような甘い誘い方に、不覚にもときめいてしまう。
「せっかく素敵な夢見たのに」
うめきながらも、彼女は誘われるままのこのこと彼のひざの上に座った。
こういうことが、実は嫌いではないから困る。
クリーオウは彼の首に腕をまわし、間近で黒い瞳を見つめた。
「欲求不満とかではないけど、でも愛してほしいのは本当」
言って、彼女の方から軽く口付ける。
目を開けると、オーフェンは苦笑してこちらを見つめ返してきていた。
その反応が気に入らなくて、クリーオウはむっと口をとがらせる。
けれど不満を口に出す前に、唇をふさがれた。
優しい抱擁付きだった。






2009.2.27
久しぶりに甘すぎた(笑)!絶対新婚さんだ〜。
上記のような再会を夢で見たので、せっかくだから語らせてみようかと。
物書き(似非)の性分でしょうか。

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