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「ふむ」 読み終えた本をぱたんと閉じて、クリーオウは一言うなった。 なんというか、感慨深いものがある。 本の内容はアクションの混じった典型的なヒロイック・サーガ。 魔術を使うシーンもあり、現代的な要素も併せ持つフィクションのファンタジーだった。 読書のお供にはエスプレッソ。 ただしそれだけでは苦いので、バニラのアイスクリームを三つ入れてある。 話す相手がすぐ隣にいるのに本を読むのもどうかと思っていたが、ひとりで過ごす時間は大切である。 会話もなく、本を相手に自分たちはそれぞれの世界に没頭していた。 二時間ほどそうしていたのだが、クリーオウの方が先に本を読み終えたらしい。 クリーオウの愛する旦那様は、何がおもしろいのか分からないような分厚い専門書を読んでいた。 実はなかなかに知的なのである。 頬杖をついて、彼女はそのまじめな横顔をじっと見つめた。 視線に気づいた夫――オーフェンは顔を上げ、目を瞬かせてこちらを見る。 「どうした?」 そう尋ねてくる姿も、やけにかっこよく思えてしまった。 腰を浮かせて、軽く彼の唇に触れる。 「?」 眉根を寄せ、オーフェンは怪訝そうに目で問いかけてきた。 妥当な反応かもしれない。 クリーオウはいすに座り直すと、呼んでいた本を指でさした。 「これね、フィクションなんだけど、主人公がヒロインを守りながら敵と戦う話なの」 作者が耳にしたら怒ってしまうような適当な説明だろうが、概要は間違っていない。 オーフェンに聞いてもらいたいのはストーリーではないので、彼女はすれだけで済ませた。 「ふーん。それで?」 「うん。主人公は魔術とかも使って体術とかもすごくて、かっこよく書かれてるのよ。でも……実はわたしのすぐそばにそんなよーな人がいるのよね」 「うん?」 いまいちよくわかっていない様子で、オーフェンが首をかしげる。 しおりを挟んで本を閉じ、こちらに聞き入る体勢を取った。 「ていうか、オーフェンの方がすごいくらいなのよね。もしかするとオーフェンてものすごーく……かっこいい……の?」 「……は?何言ってんだ、お前」 やや動揺したようにオーフェン。 クリーオウは真顔のまま続けた。 「改めてよく考えてみるとかっこいいのよね。基本的にいつも無傷でわたしのこと守ってくれてたし、キメるときはキメてたし、わたしも当事者だったからあんまり意識したことなかったけど、客観的に見てみるとほんとはすごく……」 「おい、やめろ……」 それ以上言うなというように、オーフェンが手で遮ってくる。 めずらしいことに頬が紅潮していた。 格好良すぎる発言は、後で本人が思い出すと恥ずかしくなるのだろうか。 とりあえずオーフェンの場合はそうなのだろう。 いじめすぎるのもかわいそうだと思ったが、彼女としては真剣なのである。 旦那様が格好良すぎて困ることはない。 「いつもさりげなくかっこよかった気がするけど、いつばんはやっぱり聖域なのかしら。あ、せりふの話よ?一字一句までは思えてないけど、たしかわたしを抱きしめて、女神だって――」 「わーーーーー!!」 オーフェンは顔を真っ赤にして叫び、手でこちらの口をふさいだ。 黒い瞳には涙さえ浮かべて、肩で息をしている。 褒めているのに、とクリーオウは目で不満を伝えようとした。 (2008.11.12) inハーゲンダッツ喫茶withエスプレッソアイス入り。 無謀編「なんでお前はそーなんだ!?」を読みながら。 今までやきもちでまともに読めなかったけど、オーフェンかっこよすぎ……。 |
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