楽しそうにその人と笑っているオーフェンを見て、クリーオウはたしかに嫉妬した。 知らないことを彼と話すその人を見て、クリーオウは焦りを覚えた。 遠慮なく触れ合っている二人を見て、クリーオウは泣きそうになった。 オーフェンの妻は自分で、それが裏切られることはないと分かってはいたが、こみ上げる感情を無視することはできなかった。 「あいつもう結婚してるぞ」 「……え?」 その人のことをオーフェンに聞いてみると、あっさりとそんな答えが返ってきた。 クリーオウの作ったチョコレートケーキを頬張りつつ、どうということのない口調である。 声の調子も表情も、いつもと同じオーフェンだった。 まじまじと凝視するが、彼の横顔は平然としていて、他の感情があるようには見えない。 本当に、いつもと同様クリーオウと世間話をしているオーフェンだった。 「いつごろ結婚したの?」 「いつごろだったかなあ。聞いたけど忘れちまった」 「わたしたちよりも後?」 「いいや。お前に会う前だったな」 「出会うよりも前?」 「違う。お前と別れて、んで次にアーバンラマで会った時には結婚してた」 「…………そう」 それだけ呟く。 他に何といえばいいのか分からない。 いや、思いつかなかったという方が正しいだろうか。 頭の中が白く濁って、何かを具体的に考えるということができなかった。 (あ、そっか……) それがどうしてかすぐに把握する。 いちばん聞きたいことを聞けば、傷つくことがわかっているからだ。 だから浮かんできたことを、形になる前に無意識で消してしまっていた。 (聞けばいいじゃない) 聞いたところで、何が変わるだろうか。 きっと何も変わらないに違いない。 オーフェンの気持ちも、オーフェンとその人の関係も。 傷つくのを恐れて聞かないままでいれば、逆にクリーオウの気持ちだけが嫉妬で醜くなっていく。 それなら聞いて、泣いてふっ切ってしまった方がよほどいい。 クリーオウは彼の隣からカーペットの敷いてある床へと移動した。 オーフェンの顔はあまり見えない方がいい。 昔話をするのに、くだらないやきもちで彼を困らせたくはない。 彼女は肩越しにオーフェンを見やった。 「付き合ってたの?」 「なんで」 あいまいな言葉だ。 発音が違うだけで、まったく異なる意味を持ってしまう。 深く知られないためにわざと問い返す「なんで」。 どうしてそんなことを聞くのかという「なんで」。 オーフェンの言った「なんで」は、驚きが含まれたようなニュアンスだった。 苦笑して、クリーオウはちらりとだけソファに座っている彼の顔を見上げた。 「好きそうに見えたから」 正直に伝える。 オーフェンもその人も、お互いのことを今でも大切に思っているように見えた。 自分にはないオーフェンとの関係を、その人は持っているように感じた。 うらやましかった。 「付き合うかよ、あんな無能と」 「無能は関係ないと思うけど」 オーフェンの言葉はどこまでも否定的である。 けれどその罵倒する言葉さえ、愛情があるような気がした。 かわいくて元気で、あれだけ魅力的な女性を好きにならないはずがない。 クリーオウの憧れる大人の女性像も、その人はちゃんと持っていた。 「その人と再会したとき、その人がもし結婚してなかったら付き合ってた?」 「それはないだろ」 まさかという風に、オーフェンは軽く笑い飛ばす。 それからその人のことを、オーフェンは舌打ち付きの罵詈雑言で説明しだした。 けれどそれだけ悪く言えるのも、信頼関係がすでに成り立っているからではないだろうか。 お互いに何を言っても許される仲だから、酷いことも平気で言える。 「いいな」 それはクリーオウの正直な気持ちだった。 膝を立てて、そこに顔を埋める。 浮かんでくるのは、二人の笑顔だった。 自分もオーフェンとそんな関係になりたかった。 その人のように、男女の仲を越えるような信頼を持つ関係に。 でもそうすると、彼を好きで、そして彼も好きになってくれた自分もいなくなる。 それは嫌だ。 オーフェンとずっと一緒にいたい。 これからも一緒にいたい。 けれどその人のこともうらやましくて、嫉妬せずにはいられない。 「いいな」 オーフェンはその人のことを恋愛の対象としては見なかったようだけれど。 今日、二人で笑っているオーフェンとその人の姿を見て、クリーオウは感じた。 彼らの中にあったほんの小さな小さな、 それはたしかに、恋だった。 (2008.11.10) オークリの私がこんな話を書くのは、本当に傲慢で身勝手なのでしょう。 オーコギの方々の心のダメージは計り知れない。泣いたって方のコメントも実際にいくつも見ましたし。 私も同じような経験があるので(最終巻あたりに勘違いで)、少しくらいは分かるつもり。 もし自分が同じ立場であれば、同じような絶望を味わうでしょうし。 これからもないとは言い切れないですし。 でもやっぱりそれは、まだ他人事なんでしょうね、どういったところで。 コギーのことは大好きです。かわいくって楽しくって、オーフェンとお似合いで。 彼女のことを大好きな人たちが、本当にたくさんいるのがよく分かります。 だから、ですね。私はコギーにすごく嫉妬していました。 無謀編を読んでるだけで切なくなったし、秋田先生のあの発言には泣かされましたし。 コギーがいなければ、オークリにこんなに燃える(萌える)ことはなかったんじゃないかと本当に思います。 コギー結婚しちゃったんだと、心にぽっかり穴が空きました。 何でしょう。言いたいことがうまくつかめません。 オーフェンもショックだっただろうな。妬かないはずがないもの。 幸せになってねコギー、ありがとう。泣いた。 |
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