そろそろ夜が明けるだろうか。 まぶた越しに光を感じた気がして、オーフェンはゆっくりと目を開けた。 彼の感覚は正しかったらしく、地平線がうっすらと輝いている。 野宿だった。 べつにめずらしいことではない。 この大陸に来てからというもの、雨でも降らない限りは、ずっとこうして野ざらしで眠っていた。 テントもあることにはあったが、どうしても女子供に優先して使われる。 強く言えば調達できないこともないだろうが、自ら奪いに行くほどに図々しくはなれなかった。 けれど、そろそろその考えも改めた方がいいのかもしれない。 「ん……」 オーフェンが体を起こしたことに気づいたのか――眠っているクリーオウが言葉にならない声を出す。 こんな硬い地面では満足に休めず、眠りも浅いのだろう。 「まだ大丈夫だから、寝とけ」 手の平を彼女の目に当てて、オーフェンは静かに告げた。 理解したのかもともと起きていなかったのか、クリーオウは再び小さな寝息を立て始める。 それを確認してから、オーフェンはゆっくりと彼女から手を離した。 クリーオウのためにも、早くテントなり何なり、手に入れなくてはならない。 (ま、そうなんだけどな……) 本当は彼女一人だけならきちんとした屋根のある施設で眠ることができる。 だがその提案があったにも関わらず、当のクリーオウがそれを拒んだ。 こちらの意見など聞こうともせず、何を血迷ったのか最も条件の悪い地面という場所で毎晩毛布にくるまっている。 何も好きこのんでこんな場所を選ばなくても良いとさんざん説得したが、そもそも未開拓地まで来てしまったクリーオウにはどんな理屈も無意味だった。 けれど、屋根も柔らかい寝床も放棄したクリーオウだったが、唯一譲らなかったことがある。 それがなぜかオーフェンのそばで眠りたいと言ったことだった。 もちろん当初は納得せず、詰め寄って理由を聞いた。 もっともそのせいで、強引に彼女を追いやることもできなくなったわけだが。 長い旅で過酷な目にあってきた彼女は、どこにいても深い眠りにつくことができなくなったと話していた。 しかしオーフェンがそばにいれば、いつもよりは良く眠れるのだとか。 何を理由に自分のそばなら大丈夫だと信じ込んでいるのかは知らないが、気持はわからなくもない。 顔見知りならいくらでもいるものの、彼らがいつ豹変してもおかしくない世界に自分たちはいた。 付き合いのあるオーフェンであれば、気を許せると信じているらしい。 自分もそう感じる部分があるので、そう言ってくれたことに感謝はするべきなのだろう。 理由を聞いてしまってからは無下にできるはずもなく、こうしてそばで眠ることを許している。 だがそれ故に、別の問題が発生した。 それまでは空いている場所を見つけては適当に横になっていたが、クリーオウがいるとなると話は別である。 オーフェンが異変に気付かないことはないと思うが、まさか男ばかりの中に彼女を寝かせるわけにはいかない。 うさぎを狼の群れに放り込むようなものである。 仕方なく彼の取った行動は、集団からだいぶ離れた場所で眠ることだった。 暗くなってから移動すれば、他人にこちらのいる位置を知られなくて済む。 危険が全くないとは言い切れないが、人がいる場所よりは安全だろう。 「……オーフェン……」 「うん?」 名前を呼ばれたので、クリーオウの方を向く。 けれど彼女はまだ瞳を閉じたままで、続きを言いそうな気配もなかった。 寝言だったらしい。 オーフェンは目を細めて、彼女の頭に手を乗せた。 (2008.11.4) 「地球ぎ」ピアノver.きれいすぎる。 こんなことが本当にあったら切ないな。 二人はまだ恋人とかでもなく、ただ純粋に純粋に大切に思っている。 そんな気持ちで。 |
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