□ 晴れのち曇りのち雨 □


買い物も済ませ、食事にでも行こうかと、オーフェンたちは店を出た。
大きめの店だったため、店を出ても数歩の距離まで屋根が付いている。
その間にいろいろと準備をしろということだろう。
今日は屋根の存在が役に立つ日らしく、その場で足を止める人間も多かった。
中にはまた店へと引き返す強者までいる。
しばらく時間をつぶしに行くか、傘を買いに行くかのに二択だろう――雨が降っていた。
自分たちはというと、店内に戻らずに次の目的地へ行くことができる、あらかじめ雨を予想している側である。
出かける際にクリーオウが空を見上げ「あやしい……」と呟いたのが功を奏した。
ただし、その時はただどんよりと曇っているだけだったので、傘は二人で一本だが。
思っている間に、クリーオウは素早く傘を開いてオーフェンに渡してきた。
「はい」
「ん」
受け取って、二人の間に傘をさす。
二人で歩きだすと、彼女は雨に濡れまいとしてか、オーフェンに寄り添ってきた。
食事をする場所はすでに決まっている。
よほど楽しみなのか、クリーオウがは機嫌よく鼻歌を歌っていた。
オーフェンはオーフェンで、何を食べようかと今から迷っている。
と、彼女の鼻歌が小さくなり、やがて消えた。
「?」
店まではもう少し距離があるのだが、気分でも変わったのだろうか。
頭の片隅で訝しく思っていると、クリーオウは眉根を寄せてこちらを見上げた。
「オーフェン、どうして今わたしが機嫌良いのか分かってないでしょ」
「え?」
そう言われて、オーフェンは彼女の表情をまじまじと観察する。
が、クリーオウは口をとがらせており、明らかに不機嫌そうだった。
「機嫌良いのか?」
逆に問いかける。
するとクリーオウはきっぱりと怒りながら宣言した。
「悪いわよ!」
「そうだよな」
その答えに、彼は妙に納得する。
ひとりで満足していると、彼女はさらに怒った。
「じゃなくて、良かったのに悪くなったの!」
「ああ、やっぱ濡れちまったか。ごめんな」
宥めるように、オーフェンは傘を持っていない方の手で彼女の頭を軽く叩いた。
叩いてから、自分の手に水滴が付いていたことを思い出してやや後悔する。
これでは逆効果である。
「それも違うわ!」
「じゃあ何だ?」
クリーオウはもどかしそうにしているが、オーフェンにも彼女の怒る理由がさっぱりわからない。
すると彼女は、おもしろくないといったように唇を尖らせた。
「二人で一本の傘をさしてるのが嬉しかったの!」
「わかんねーよ」
わかるわけがない。
クリーオウは当然のことのように告げてくるが、今の心境の変化を理解できる男の方が少ないだろう。
しかしそう思うオーフェンがもしかすると少数派なのだろうか。
どちらにせよ、今優先させるべきことは、彼女の機嫌を取ることだ。
とはいえ、クリーオウが喜びそうなせりふなど、すぐには思いつかない。
てっとり早く、オーフェンは彼女の額にキスをして事を収めた。






(2008.10.5)
道行くカップルはネタの宝庫だ!のときがある。
ラストひでーよオーフェン。
読みにくくてすみません、でも素材が気に入ったので!

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