□ お料理爆弾 □


ダイニングのテーブルにつくと、ありがたいことにすでに朝食が用意してあった。
本日のメインは玉子のココットらしい。
作り方は知らないが、小さい器に具を敷いて、その上に玉子を一個乗せてある。
具は日によって変わるが、見た感じではにんじんやきのこなどがもりだくさんに盛ってあった。
何が入っているかがわからないのが、また楽しみのひとつであると思う。
淹れたてのコーヒーを置き、クリーオウは彼の正面に席についた。
「時間大丈夫?いつもより少し遅くない?」
壁の時計をちらりと見やって、彼女が聞いてくる。
オーフェンもその視線を追ったが、何とかなると判断した。
「ま、大丈夫だろ。じゃあ……」
子ども心に戻ったように、わくわくしながら玉子にフォークを突き刺す。
その瞬間――
「――っ!」
オーフェンでさえ、神経がついていかなかった速さ。
目を閉じる暇もなく、爆発したように玉子が飛び散った。
「熱っ!」
一瞬後、沸騰した玉子の温度が神経に届く。
彼は驚いていすから飛びのいた。
実際はすでに終わったことなので、その行動に何の意味もないのだが。
「……へっ」
息を吐いてから改めて自分を確認すると、玉子の黄身が服はおろか髪やら顔やらにはりついていた。
あわてて振り払ってから、思い出したようにクリーオウを見る。
「大丈夫か、クリーオウ」
彼女はというと、肩をすくめたままの姿でその場に硬直していた。
オーフェンと同じように髪の毛や肌に玉子が飛び散っており、無残な姿である。
幸い目には入っていないようだが、瞳を見開いて呆然としていた。
落ち着いて周りに視線をやると、壁や食器棚にも被害が及んでいる。
大した量ではないにしても、掃除は大変だろうと容易に想像できた。
「おい、大丈夫か?」
黄身がくっついたままの姿で、仕事には出かけられまい。
被害のないそでの部分で、クリーオウの顔をぬぐってやる。
「ごめん、オーフェン。わたし穴を開けるの忘れちゃってたみたい」
「穴?」
彼女曰く、ココットを作る際にはあらかじめ玉子の黄身にくしなどで穴を開けなくては、このようなことが起こり得るらしい。
しかしここまで酷いことになると、誰が想像するだろうか。
「こりゃ完全に遅刻だな」
上着を脱ぎ、苦々しく呟く。
金髪に玉子をくっつけながらテーブルを拭いていたクリーオウは、罪悪感があるのか、もごもごとうめいた。
その姿は、家事に慣れない新妻が反省して落ち込んでいるもので、ひどく愛らしい。
「悪いと思うんなら、これから一緒にシャワーあびてくれるな?」
この状況を逃すわけはない。
オーフェンは彼女の耳に唇を寄せ、楽しげに囁いた。






(2008.9.17)
とある小説のあとがきを読んで、ヒントにしました。
ココットは一度だけ作ったことがあったので。
平和だ。

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