□ FULL MOON □


風呂からあがり、髪の毛をタオルでふきつつ寝室のドアを開けると、彼は部屋の暗さに驚いた。
誰もいなければ暗いのは当然だが、今日は彼よりも先にクリーオウが来ているはずだった。
彼女が別の部屋にいれば何もおかしいことはないのだが、他に灯りがついている部屋はなかったような気がする。
一瞬誰もいないのかと思いかけたが、ベッドの上に静かに腰かけているシルエットを捕らえる。
「どうしたんだ、灯りもつけないで」
手っ取り早く、魔術で部屋を明るくしようと呪文を唱えようとする。
「あ、だめ」
途中で遮られ、オーフェンは疑問に思いつつも彼女のそばまで寄っていった。
いつもと様子の違う彼女に、つい期待してしまう。
が、クリーオウは自分ではなく、窓越しに何かを熱心に見上げていた。
「何かあるのか?」
いつもはうるさいほどしゃべる彼女なのだが、めぞらしいこともあるようだ。
同じようにオーフェンも外を見上げると、夜空の色を変えてしまうほどに眩しい光を、月が放っていた。
「満月か」
そういえば灯りなしでも歩ける程度に光が差し込んできている。
「すごいわね。月がこんなにも明るいって思ったのは久しぶりだわ。昼間はちょっと曇っててどうかなって心配してたんだけど、ちょうど晴れてきたみたいだし」
「ふーん」
月と同じ色の湿った髪を撫でながら、適当に返事をかえす。
「気温も低くなってきたし、お月見するのに最適ね。風が気持ちいいし、月がすごく神秘的」
「ふーん」
返事はするが、内心はどうでもいいと思っている。
髪をふいていたタオルを無造作に置き、クリーオウをゆっくりと横たえる。
だがその間も彼女は、魅入られたように月を見つめていた。
「こら」
やや不機嫌になり、クリーオウの頬を両手で包む。
すると彼女は目をぱちくりさせ、こちらに焦点を結んでくれた。
「月じゃなくて俺に夢中になれよ」
命令口調で言うが、実際にはお願いである。
すると彼女はくすくすとおかしそうに声を出す。
その笑顔を見て、オーフェンはすぐに満足した。






(2008.9.14)
中秋の名月の日に書いたもの。月を見ながら。
フルムーンていうとBBBですよねー。
ごめん、もう読んでないの。


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