□ 盲目 □


オーフェンは彼女をソファに押し付け、その柔らかい唇を貪った。
頭の芯がぼうっとして、時間の感覚が消失する。
邪魔するものは誰も何もない。
今なら世界が消滅しても良いとさえ思えた。
こんな気持ちは知らない。
腕を掴んでいるクリーオウの細い指がたまらなく愛しい。
溶けていきそうな体を意識して、オーフェンはようやく彼女を解放した。
鼻と鼻が触れ合いそうな距離で見つめ合う。
クリーオウは甘く溜め息を吐くと、潤んだ瞳でくすりと微笑んだ。
「……オーフェンてば隙だらけね」
「……お前もな」
力の入っていない声で言われても、まるで説得力がない。
「わたしが賞金稼ぎや暗殺者だったらどうするつもりなの?」
そう尋ねてきたが、彼は吸い寄せられるように、またクリーオウの唇を奪った。
もうまともに返事をする気持ちさえ失せている。
欲望のままに舌を絡めて、ほんの僅か残った思考で答えを探そうとした。
色恋に我を見失って任務に失敗するという暗殺者のことはよく耳にする。
そんなものかと他人事のように聞いていたのだが、それも今ではわかる気がした。
これだけクリーオウに溺れているのだ。
例えば今、騎士団に囲まれていても、逃れようとすら思わないだろう。
むしろ彼女を人質に、どこまででも逃亡しようとするかもしれない。
薄く目を開ける。
クリーオウはぎゅっと瞳を閉じて切な気にこちらを求めていた。
長い金色の睫毛が、微かに震えている。
気持ちがさらに深くなって、オーフェンは噛み付くようなキスを続けた。
――どれくらいそうしていただろう、息継ぎのために彼女から離れる。
クリーオウの濡れた唇を指でぬぐい、先ほどの質問に答えてやった。
「お前が選んだんなら、たぶん俺は抵抗しないだろうな」
だが、彼女が何かを言う気力はなさそうだった。
小首を傾げて、不思議そうにしている。
本当に自分は隙だらけだったので、言ってみたくなったようだ。
まあそれも今は大した問題ではない。
オーフェンは自身の望むまま、再び彼女の唇を味わった。






(2008.9.14)
キスに夢中で隙だらけ。それにツッコミ入れたかったというか

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