□ 好きだと □


「時々ね、ふいに思い出してすごく寂しくなることがあるの」
「……なにが」
真剣な目をして話してみても、答える声はそっけない。
するとよけいに寂しさが増して、クリーオウは気を引くように彼の腕をにぎった。
コーヒーを飲んでいるところにいきなり突拍子もないことを言ったからか、オーフェンは意味がわからないというようにこちらを見た。
寂しさの理由は、この際おいておく。
強いていえば少し離れている時間があったからなのだが、それをいちいち説明する気はなかった。
「今、すごく寂しいわ。心が空っぽになったみたいで」
「はあ?」
彼女は必死だったが、色気も何もない、素っ頓狂な声が返ってくる。
彼にとっては分かるはずのないことなのだろう。
この温度差に、いっそう悲しみが募る。
「だから……」
瞳をうるませ、じっと彼を見る。
するとオーフェンは何かを期待したのか、少し姿勢を正した。
「だから……?」
「だから、好きって言って?」
そう口にすると、オーフェンは困った顔をした。
照れているのではなく、本当に困った顔だった。
こんな態度では彼女が寂しくなるのも当然のことではないだろうか。
願って願って十秒待ってみても、彼はクリーオウの欲しい言葉はくれない。
その代わりにオーフェンはその困った顔のまま、クリーオウの金髪に指を絡ませキスをしてきた。
きっと精一杯の愛情が込められた、優しいキスだった。
唇を離すと、困った顔に少しだけ笑顔を乗せて、
「これでいいか?」
と聞いてくる。
少しは軽い気持ちになるものの、まだまだ足りない。
今度は理由もなく、涙が瞳に盛り上がった。
「クリーオウ?」
あまりにも自分がらしくないからか、オーフェンが見るからにうろたえていく。
クリーオウをあやすように髪を撫で、背中をさすられた。
耐え切れず、オーフェンの広い胸にしがみつく。
理由は自分でも良く分からない。
ただ、涙が出てくるのだ。
「オーフェン」
抱きしめられている腕の中から、彼を見上げる。
オーフェンはキスをしたきた前よりも、もっと困った顔をしていた。
それを見ると、なぜだか自然と笑みがこぼれる。
寂しいけれど、悲しいけれど、やはり愛しい。
だから。
「好きなの」
だから、届いて。






(2008.9.11)
好きって言って欲しかったのに、言っちゃった。
オーフェン困ってたもんね。
こういうのって、クリーオウっていうよりは私なんですよね。ごめんね、クリーオウ。
伝わればいいな。応えてくれるといいな。

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