□ ハロウィン □


食後の一服中、いつものようにクリーオウが彼の隣に座ってとめどなくしゃべりだすと思いきや、なぜか彼女は楽しそうにどこかへ消えた。
足音からすると、現在はあまり使ってない部屋だろうと想像する。
何か用事があるのだろうと、オーフェンは特に気にせずソファに体重をあずけていた。


数分後、なにやらぱたぱたとこれもまた楽しそうな足音がする。
嬉しそうに部屋に飛び込んできたのは、おかしな黒い服に着替えたクリーオウだった。
「Trick or Treat?」
それを聞いて、今日が何の日だったか思い出す。
たしか以前に、子供がハロウィンに仮装をして各家をまわるので、お菓子を用意してくださいという回覧板が回ってきたとクリーオウが話していた。
要するに彼女も同じことがしたくなって、このような仮装をしているのだろう。
短いスカート型の黒いローブとに、とんがりぼうし、棒の先には星の付いたおかしなステッキという姿で、本人は魔女のつもりらしい。
彼女は一流の魔女たちを何人も見てきたはずなのだが、記憶からは消えうせたようだった。
クリーオウを含め、世間の大半は魔術士を誤解している節がある。
彼女はオーフェンの正面まで来て、今度はゆっくりと聞いてきた。
「Trick? Or Treat?」
「なんでミニスカートなんだ?」
質問には答えず、クリーオウを見上げながら逆に問い返す。
引き寄せようと触れた彼女の太ももは、ひんやりと心地好い。
「こっちの方がかわいいでしょ?で?おかしにするの?それともいたずら?」
それにオーフェンはにやりと笑い、彼女の指を自分の指に絡ませた。
「いたずらかな」
お菓子を期待していたクリーオウはむっとしたが、右手にはステッキ、左手にはオーフェンという状態で手が出せない。
もっとも、右手に彼女の手、左手に彼女の脚と両手をふさがれているのはオーフェンも同じだが。
「してみろよ、いたずら」
余裕の笑みを浮かべ、オーフェンが彼女を促す。
するとクリーオウは、ぱくりと彼の鼻に噛み付いた。
突然のことに驚いたオーフェンを見たのが嬉しかったのだろう――クリーオウが会心の笑みを浮かべる。
だがそんなもの、彼にとっては痛くもかゆくもない。
「かわいいもんだな、お前のいたずらは」
さらに笑みを深くして、オーフェンは彼女に触れた左手を移動した。






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